心配。 ページ10
声高らかに恵比寿は言った。
【皆様に拒否権はありませんよ】
【だって、皆様は私の「所有物」なのですから!】
その言葉に俺含めた皆の口が閉じた。
そして一気に会場は沈黙に包まれた。
俺達は、モニターの向こうに佇んでいる恵比寿に抵抗できる手段がない。
きっと、「所有物」という事は全てアイツの支配下という事だ。
アイツがその気になれば俺達はどこかに売り飛ばされてしまうのは間違いないだろう。
そしたらどうなるんだろう。
…もしや、食われるとか。
悲惨な事は確定といってもいい。
ポジティブな考えは浮かばない。
【ふふ〜ん、ようやく自分達のおかれた状況に気付き始めたようですね】
【では、もっと実感を持ってもらう為にこの中から一人、売却してみせましょう】
その時俺の思考が止まった。
姉さんに逢えなくなる。
姉さんに救われたのに。
俺は恩を仇で返すのか?
鳥肌がたった。
死 に た く な い。
今迄の十八年間で初めての想いだった。
姉さんの為に。
生きる事を決めたあの日。
生きる事しか知らなかった日。
当たり前だと思っていたあの日。
【だ・れ・に・し・よ・う・か・な・〜】
この一言で、俺は息の仕方を忘れた。
選ばないで、選ばないで、選ばないで…
テイキチ「ま、待ってくれ!
俺は炎の能力を持ってる!」
テイキチの声でハッとした。
テイキチ「まだまだ価値が上がるんだろ。
今売ったらもったいないぜ!」
叫ぶテイキチ。
自分自身の能力を物として扱って価値を上げようとしてるのか?
ナルア「あ、ずる〜い!あたしだって、きっと凄い能力があるはずだよ!」
ミツル「俺にも能力が…?」
ポツポツと喋り始めたその時、また恵比寿が声をあげた。
【もちろん!【すでに皆様は能力者】でございます。誰にでも価値を上げるチャンスがあるのです】
耳が痛くなる様な声で言った。
【各自、自分の名前が書かれたモニターをご覧ください!】
俺達の視線はモニターに集められた。
『………………………株価の、チャート』
喉が渇いて、鼓動が激しくなる。
よたよたと歩き、ミツルの近くまで来てしまった。
改めて感じたのだ。
俺達はその瞬間、恵比寿のモノとなった。
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A5158推しの吹奏楽部 - 人身売買デスゲームはよく知らないんですが、とてもわかりやすくて読んでて面白かったです! (2018年9月3日 22時) (レス) id: 15db344b9c (このIDを非表示/違反報告)
ちえ(プロフ) - 報告ありがとうございます。「仲良しさんだからです」ですね、正しくは。直させていただきます。 (2018年8月5日 8時) (レス) id: e66cbf662f (このIDを非表示/違反報告)
天音(あまね)(プロフ) - 誤字かもしれませんが、『良心。』のパートで主人公のセリフは「仲良しさんからです」ではなく「仲良しさんだからです」じゃないでしょうか…?それと、この小説すっごい面白いです!これからも応援しますね! (2018年8月4日 22時) (レス) id: 6b8e28c33a (このIDを非表示/違反報告)
ちえ(プロフ) - 鏡花ちゃん大好きさん» わぁ、有難う御座います。コメント励みになります。 (2018年7月31日 7時) (レス) id: e66cbf662f (このIDを非表示/違反報告)
鏡花ちゃん大好き(プロフ) - 話面白い。好き。これからも頑張って。もやし。 (2018年7月30日 20時) (レス) id: f8819b27eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もやし | 作成日時:2018年7月20日 22時