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ベクは優しく微笑んで
私たちに背を向け研究所に走って行った。


『もう、離してください』


「…でも」


『追いかけたりしません』


ゆっくりと離してもらってたくさん思い出が詰まった研究所を見る。


『大好きだよ、ベク』


そう言った時
一瞬の眩い光が目を覆った。


「…終わった」


そしてさっきまでの騒がしさはまるでなかったかのように静まり返った。


『…ベク、ベク!』


もし生きてるなら


「行こう」


もう一度その暖かい手で頭を撫でて欲しい。
あなたの声が聞きたい。


「こっちです」


研究員の後ろに続いて入ったのはいつも外から見ていたガラス張りの研究室。


『ベクは?ベクはどこ?』


「…ここです」


研究員が私の前から退くと横たわるベクがいた。


『ベク?…ベク』


その頰に手を当てると氷のように冷たくて。


「Aさん…」


『ねえ、べく。起きて…』


揺さぶってもその閉じた目は開かないまま

ああ、ダメだなあ。
決めたのに、笑顔でお別れするって…


『べく…べく…っ』


行かないで、消えないで。


あなたの優しい嘘も全部気づいてた。
きっとあなたは私の強がりも気づいてたでしょ?

想いを上手く言葉にしてくれない人だったから私の想いを理解してくれる人だったから


全部、全部。


『…すき、すき…だいすき…』


冷え切ったその顔に私の涙が落ちていく。
震える手で顔を何度も触る。

最後に見たベクは笑ってた。
初めて出会った時と同じようにベクらしい呆れるくらいの眩しい笑顔で。


「ベッキョンさんは素晴らしい人でした」


研究員の人が教えてくれた。

この機械を止めるには燃えるような暑さの中機械の内部まで入らなくてはいけない。
だけど、止めた瞬間、一気にマイナス温度まで冷え切って体温を奪う。


「ベッキョンさんが残した手紙です」


研究員の人に渡されたのはベクから私へ向けた手紙


『いつこんなの…』


「我々は命の危険と隣り合わせなので」


そっか…
私が言えたことじゃないけど、ベクは若いのにもう命と隣り合わせの所にいたんだ。


『ありがとうございます』


手紙をぎゅっと握りしめて、冷たくなったベクの上半身を抱き上げた。


『冷たい』


最後はどんな気持ちだったの?

fin→←4



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作者名:enen♪ | 作成日時:2016年5月29日 19時

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