欲と抑 ページ37
仕事終わり、久しぶりにAちゃんと２人でご飯を食べに来た。たまたま終わるのが一緒だったので誘ってみたら「いいよ」と即答。心の中でガッツポーズしたのは言うまでもない。前にカフェのリニューアル前にお呼ばれして以来の２人で外食だ。
歩きながら、今日はどこ行こうかなんて考えてる側から「あそこ行こ」と手っ取り早くファミレスに入っていくから気が抜けてしまった。別にジェントルマンしたいとかそういうのではなく、気になる子の前では少し格好つけたいのが男子という生き物の性(さが)だと思う。
「んー、ファミリーレストランってたまに行きたくならない？」
「あぁわかる、わかる。たまに食うと美味いんだよなぁ。Aちゃんも来るんだ？」
「ごく稀に。時々。気が向いたら。時たまね」
「そんなに類義語羅列しなくてもわかるって」
晩御飯だというのに、Aちゃんはフライドポテトとピザというジャンキーなものをチョイス。僕はというと、ハンバーグセットだ。
「そういえば、デンマークは何が美味しいの？」
「カルフォルニアロール」
「寿司なんだ？」
「うん 大好き」
「意外だなぁ。あっちだと乳製品やハムとかパンだと思ってた」
「んー、まぁそうなんだけど。それらはお土産で売ってるのが多いかな。」
「へぇー」
そうこうしている間にピザとポテトが届けられた。
「お先にどうぞ」とすすめると「ありがと。Bon appetit」と手を合わせて食べ始めた。程なくして、僕のハンバーグセットも届いた。
「…ねね」
「ん？」
「あたしもハンバーグちょっと食べたい」
「ん？いいよ」
ハンバーグを切り分けてお皿の隅に置いてあげる。
彼女はありがと！と喜ぶとピザを一切れわけてくれた。
それからは仕事のことや勉強のこと、たわいもない話をして過ごした。
気付けば１時間半以上が経過していた。もうこんな時間、と急いでお会計。譲ってくれず、割り勘になってしまったが、Aちゃんのことである。そんなことは全く気にしないであろう。
「ふぅ、食った食ったー！」
「な！たまには悪くなかったな！」
「あ、そうだ！！」
店を出てスロープにお尻を乗せて滑るという子供みたいな遊びをしているAちゃん。スタン！と着地してこちらを向いた。
「ちょっと家きてよ」
唐突すぎではないか
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作者名：モスモス | 作成日時：2020年4月13日 0時
