噂 ページ35
【川上拓郎さんと付き合っている】
人の噂は75日という。どんな噂が立ってもそれは一時的なものに過ぎず、75日も経てば消えていくものだから、放っておけば良いという意味である。
A wonder lasts but nine days.(驚きも九日しか続かない)なんて言葉もある。
ネットはどうだろうか。デジタルタトゥーなんて言葉が存在するくらいである。
はぁぁぁぁ…
拓郎に迷惑をかけてはいけない。とりあえず、まず謝ろう。ポケットの携帯とテーブルの煙草とライターを持ってベランダに出る。煙草はこういうときに限って残り2本しかない。火をつけて咥え、携帯電話で通話履歴からそう古くないところにある【Takuro】を見つけて発信をする。
ツーコール目で出てくれた彼。
「もしもし？どうしたん？」
「実は…なんかネットでさ、動画に出演したから私のまとめみたいなのが作られててさ。そこで私ら付き合ってるみたいなことが書かれてたよ。拓郎に申し訳なくって」
「…珍しい。」
「は？」
「謝るなんて珍しい」
「え？え？」
「かまへんよ、そんなん」
「でもさ、拓郎は...」
「放っておいたらいいやん。ネットの噂や嘘なんか気にしたらあかんし」
「…う、うん」
「ま、あんまり見んこっちゃな」
「...だね」
「まぁ、また困ってたら電話しておいでー」
「Tak」
彼の言葉には感謝である。
巻き込まれているのにもどうしてこうも優しいんだろうか。あぁ、有難い。
もう1本吸うかな、と煙草を咥えたところでベランダが開く。
「須貝さんじゃん」
「…おう。川上さんなんて？」
「気にすんなよなぁーって言われた。」
「まぁ、彼ならそう言うだろうと思ったよ」
「良かった良かった」
タバコの燃えるジジッという音が心地よい。先端の灰が落ちそうになり、灰皿に落とす。
煙草がある程度短くなり、灰皿へ押し潰していれる。そして、代わりにスマホをポケットから出してやる。
と、いうのも最近は副流煙を気にして、吸ってすぐは中へ戻らないようにしている。
これは肩身の狭い喫煙者なりの非喫煙者への配慮だ。
「ったく、根も葉もない噂を信じてもらっちゃ困るんだよなぁ.....」
「そうだよなぁ。本人の証言だったりが1番なのになぁ」
「...いいこと思いついちゃった！！」
「え？何？」
「まぁ、楽しみにしたまえ！！！」
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作者名：モスモス | 作成日時：2020年4月13日 0時
