迷走 迷想 ページ24
喫茶店でもなかなか納得いくように進まず、オフィスに行って誰かに相談をすることにした。
頭の中で編集画面を想像して、何度もこの前の撮影を思い出す。
あのときのこうちゃんのツッコミは面白かったからカットせず使いたい、伊沢さんのあのウンチクは途中で強引なカットをしてみたい、３問目誤答したときの山本の大ジャンプは置いておきたい。福良さんが毒吐いたところも置いておきたいし、めちゃくちゃ頭かかえる須貝氏も置いておきたい。
もうさ、カットせずに字幕だけつけてやろうか。ダメだ、それだと１時間番組じゃないか。
手軽に短時間でみれるのがYouTubeのいいところでしょうが。
ほんと、どうしよう。全てが面白いから編集できない。
「...ッちゃん！！！Aちゃん！！」
「え？」
後ろから須貝さんの声がしたかと思うと、手を掴まれた。瞬間、目の前の道路を車が通過していった。
「まじでびびった！！！めちゃくちゃ深妙そうな顔したAちゃんが赤信号進もうとしてんだもん！！どうした？！」
「...So Sorry...考え事してた」
「勘弁してくれよ。心臓止まるかと思ったわ」
「私もびっくりした」
「気を付けてくださいよ？」
「はーい」
まさか自分がそんな不注意をするなんてびっくりである。編集のこと考えて、あの面白い動画を世に晒さずに死んだならば、元も子もないではないか。
「そうだね、死んだらあの動画アップロードできないもんね。いかん、いかん」
「そこ？！？！違うでしょ！」
「今の私はそのことで頭がいっぱいなの」
「この前の企画？面白かったもんね」
2人とも何も言っていないが、並んで歩いてオフィスへ向かっていた。そして彼は、然りげ無く車道側を歩いてくれていた。
「俺さ、Aちゃんが緊張してるとこ面白くて笑うの堪えてたんだよねぇ」
「気づいてたよ！勿論、そこだけ須貝氏にアップしてるから！」
「まじかよ！！やりあがったな！！」
「面白かったんだもーーーん」
そりゃそうだ！面白いとこらは使わないと損である。
その自由は、編集者の特権である。
「してやったなりー」
「やられた！！！！」
オフィスのマンションに着いて、さ行こっかとオートロックを開けようとしたとき
「ね、Aちゃん。終わったあと暇？」
「へ？...暇だけど？」
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作者名：モスモス | 作成日時：2020年4月13日 0時
