追い込まれる ページ19
あれからというものの睡眠学習すらそこそこに動画の企画のことで頭がいっぱいである。
ノートの端っこには思いついた問題や適当なワードを箇条書きしていく。
肝心のノート中央の板書スペースは微々たる量である。
「珍しいね、起きてるなんて」
「んー、まぁね。あとで、ノート貸してくんない？」
「え？真面目に受けてるんじゃないの？！」
アルパカ先生(髪型がお洒落なアルパカみたいなのが由来)の講義はいつもユキコと受けている。
ユキコは私の保護者みたいで、寝ていると膝でつついて起こしてくるわ、ノート貸してくれるわ、最近なんて2日前に「事前課題やった？」なんてメッセージしてくる。やってるわ！.…３回に１回くらい。
「おーーい！そこ、ガヤガヤ煩いぞー」
「すみませーーん！アル…芦田先生！」
「ちょっと！A！アルパカって言いそうだったでしょ！
「わりぃござんした」
講義のあと、スマートフォンでユキコのノートを撮らせていただいた。「せっかく起きてると思ったのに」なんて小言付きで。
余談だが彼女は彼氏と同棲中である。
さて、ユキコとも別れたところで頭の中は企画のことで要領オーバーである。
何にしようか...どうしようか...
先程書いたノートの断片を思い出しながら歩いていると頭に重みが。
「Какой？！」(何？！)
「おーつかれぃ」
「何だ、ナイスガイか。お疲れ様です」
「今からオフィスいく？」
「いいえ、帰ります」
「そっかー。じゃ、途中までお供します！」
「キビダンゴ渡してませんけど？」
「え？！俺って猿？！キジ？！犬？！」
「…どちかといえばzebra？」
「は？！」
今更だけどこの人、背高。
「ねぇ、なんでシマウマなの？」
「そんなことより身長いくつ？」
「…179」
「Oh...高いねぇ。あたし、見上げないといけませんわ」
「…ねぇ、それわざと？」
「はい？身長的に仕方ないでしょう。私の身長は155cmなわけですよ。日本人女性の平均よりやや下です、やや下。ナイスガイは179cmでしょう？日本人男性の平均を上回ってますし、私との身長差は20cm以上。そりゃ見上げますよ、えぇ。たっけぇなー、って見上げますよ。映画館の最前席並みに見上げますってば」
「わーった！わかったから！」
「言っとくけど！オズの魔法使いのジュディ・ガーランドには勝ってるから。…身長だけね。…身長だけ」
なんだか言ってて虚しくなってきた。
「この話終わっていい？」
「勝手に始めたの貴方よ？」
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作者名：モスモス | 作成日時：2020年4月13日 0時
