わがまま

内緒　慧悟side ページ3

家についてインターホンを鳴らす。


すると、明らかに酔っているAがでてきた。



貴「あ、慧悟。いらっしゃい。飲もう?付き合って？」


慧「飲もう？じゃねーよ。
お前、酒弱いのに何でそんな飲んでんだよ！」


そう怒鳴ると、俯くA。




その視線をたどると

黄色のパンプスが目に入る。



これ…。

ああ、そうか。


慧「謙太郎の命日が近いからか？」


この、黄色いパンプスは謙太郎がAにプレゼントしたものだ。


出してあるってことは…。




貴「違うよ、関係ない。

もう、謙太郎のことは吹っ切れてるからさ。




だって、1年もたつんだよ？」



そう言ってリビングに戻っていく。


とりあえず部屋の中に入ると

酒が散らかっていて。



Aも俺が怒鳴ったからか、

飲む気が失せたらしく、



ソファーに寝転がる。




慧「ったく…。」


カラになった缶を片づける。


一本まだのこっていて

飲み干す。




間接キスじゃん。とか思ったけど。


そんなこと気にする年でもないだろう。



気が付くとAは寝ていて、


そっと毛布を掛けてやる。




貴「けん…たろ…。」

Aの頬に涙がつたう。



慧「何が、吹っ切れた だよ。
謙太郎と住んでたこの部屋さえ、出れないくせに…。」



そっと涙をぬぐう。



謙太郎と住んでたこの部屋。

引っ越さないのはめんどうだから、と
言っているけど

ほんとは


謙太郎との思い出の場所を失いたくないからなんだろうな…。




なあ、謙太郎。



お前さ。こんな彼女じゃ、天国でも気が気じゃねーよな。

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