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ジェム王国
町内
「あと2日でA様の聖誕祭だな」
「ええ！去年の聖誕祭では体調を崩されてパレードも開催されなかったから、A様のお顔を見るのは2年ぶりね。きっとあれからもっとお美しくなられてるんだわ」
海賊女帝も後ずさる程の美幌。国では皆Aの事をそう例える。
「今年は18歳の成人の儀も兼ねている。きっと盛大になるぞ」
「噂では天竜人も訪れるっていうじゃない」
酒場は2日後に行われる王女Aの聖誕祭の話題で持ち切りだった。
「すまない、大所帯なんだが入れてもらえるだろうか」
「ああ！勿論さ！先に座ってくれ」
そこへ訪れたのは、先ほどジェム王国に訪れたばかりの赤髪海賊団だった。
そうして店主は注文された酒を運び終えると、もしかして、といった風に尋ねた。
「あんた達見ない顔だね。もしかして聖誕祭の為に来たのかい？」
「聖誕祭？」
「ああそうさ！2日後にはこの国の王女A様の成人の儀も含めた聖誕祭がある！滅多に見れないA様を一目見に、あの天竜人も訪れるって噂さ」
「ほお、そりゃとんでもない美人なんだな。そのA様は」
店主とシャンクスの会話を隣で聞いていたベックの呟きに、鼻高々に店主が1枚の写真を取り出しテーブルの上に置いた。
「これは2年前の聖誕祭の時の写真さ。まさに女神だろう？」
話を聞いていた赤髪海賊団の皆が集まって、テーブルの上に置かれた写真を覗き込む。揃いも揃って息を飲んだ。
「…こりゃあ、」
底に移る真っ白のドレスを着た少女が、この世の何よりも美しく見えた。
そうして海賊達が息を飲む姿を見た一人の男がフン、と鼻で笑った。こちらに向かって歩いてきたかと思うと、Aが写った写真の上で持っていたグラスを真っ逆さまに傾けた。
「ああ！！」
店主は声を荒らげて、何をするんだ！と吠える。
「おいクソ神父！！テメェなんて事してくれてんだ！せっかくのA様のお写真が台無しじゃねえか！」
クソ神父と呼ばれた初老の男は、神父のくせにサングラスをかけ煙草をくわえながら昼から酒を浴びるあまりにも神父らしくない出で立ちだった。
「おいアンタら海賊か？Aの為に来たならご苦労なこった。あんな引きこもり王女の聖誕祭なんぞに意味はねえよ、とっとと出ていきな」
そう言って酒場を出る男の背中を皆が訝しげに見つめる中、シャンクスだけが何かを考えるように目を閉じた。
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作者名：酒粕 | 作成日時：2022年8月18日 1時
