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ジェム王国
地下牢
現在
「そっからはお察しの通りだ。Aを逃がすことはできず、そこの腰の低い元国王様は自分一人で罪を被り俺に全てを任せたのさ」
だが、俺にだってどうしようもできなかった。そう言ってシャンクスを見つめた神父。
「今回しかチャンスがねえんだ。Aを助けられるのは、赤髪のシャンクスただ一人だと俺は確信してる」
「悪魔の実の能力か」
「ああ」
シャンクスは片膝を立て頬杖をつくと、気だるそうに言った。
「…乗らねえな」
「あ？」
「気分が乗らねえ」
「てめぇ…！」
「お頭ァ、そりゃないぜ」
今にも殴りかかりそうな神父と、訝しげにシャンクスを見る赤髪海賊団。皆も正義のヒーローの真似事などする気はなかったが、ここまで聞いておいて流石にそれはないだろうと言った様子だった。
「俺が欲しいと思ったのはキャバレーで踊っていたあの女だ」
「…どういう意味だ」
「助けが来るのを待っているだけの囚われの王女様に手を貸すつもりは毛頭ない。あいつはここから出て何がしたい？目的もない逃亡に意味は無い。違うか？」
その言葉に思わず神父は口を噤んだ。
「あいつが海に出てどうしたいか、何がしたいかを直接聞くまで俺は絶対にAを助けないぞ」
あんないい女攫っちまおうと思っていたが気分が変わったと、シャンクスは言った。
「神父サマの神のお告げとやらがどこまで正確なものかは知らんが、あんたも元海賊なら知ってるだろう？海賊は自由なんだ。お告げがなんだ？運命がなんだ？そんなもの捻じ曲げてやるのが俺達だ」
つまり、と続けてシャンクスは笑った。
「Aを助けるも助けないも俺の意思だ。お告げ通りの未来を辿ってなんかやらねえさ」
「お前、いい性格してるぜ」
「よく言われるよ」
立ち上がったシャンクスは、ルゥに目配せをする。
そしてルゥがシャンクスを横切り鉄格子に手をかけると、いとも簡単にへし折って出口を作ってしまった。神父とトレゾールは目を見開き口をあんぐりと開けた。
「よし、そうと決まればAに会いにいくぞ野郎共！」
「全く、あんたって人は…」
ベックマンが苦笑いを零した。
「トレゾール様、あんたはどうする？」
「私は私の使命を全うします」
赤髪海賊団の背中を見送ったトレゾールがそう言って笑った。
「乗りかかった船だ。今度は俺も最後まであんたに着いてくぜ」
「貴方も物好きですね」
「うっせ」
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作者名：酒粕 | 作成日時：2022年8月18日 1時
