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ジェム王国
場内
2人で食卓を囲むにはあまりにも大きすぎるテーブルは、豪華なのだろうがどこか寂しさを感じさせた。
「A、今回の聖誕祭が最後のチャンスだ」
『…はい』
「心はもう決まったかい？」
父はいつも、私に決定権があるように話す。
『私は、何も欲しません』
「ああ」
『私の全てはジェム王国と、その民の為に』
国の未来永劫、繁栄を祈っております。
「よく言った、それでこそ僕の女神だ。この国が望むものは二つに一つ。お前か、お前が生み出す“神話”の再現だ。お前が僕の言うことを聞いてくれる王女であり続けるなら話は別だったが、最近は“出来が悪い”からね」
─────ならばせめて、国の為に死になさい。
『…はい、ロワイユ国王陛下』
「王とは人在らざるもの。A、王女であるお前とて例外ではない。我々は民の上に達、民を導き、またある時は民の為に死ぬことさえ厭わない」
この国の全ては“ジェム”で出来ている。
ここまで国が発展できたのは、この国でしか発掘できないジェムを主とした経済的復旧が大きな理由の一つである。
ジェムの名前の由来は、神話に出てくる“女神の涙”である。枯れ果てた名も無き国を嘆いた女神が国を思い流した涙が、大地を豊かにし国を発展させたという神話。
そしてジェムが発掘されたのは18年前。発掘者はまだ王ではなかったロワイユ。彼は見つけたのだ。
「僕の美しいジェム。宝石。女神。お前が始めたこの国だ、終わらせたくはないだろう？」
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18年前のある日、1人の赤子が生まれた。
母親は出産に耐えきれず、まもなく死亡。
母の亡骸を見た赤子は泣いたのだ。その涙は、雫となることはなかった。
─────コロン─────
虹色に輝く小さな欠片を、男は拾い上げた。
死した妻の亡骸など、とうに興味はなかった。
目に映るのは、小さな“ジェム”と産まれたばかりの“女神”だけ。
この国がジェム王国と呼ばれる前の話。
国の土地は穀物を育てるには適さず、人々は貧困に喘ぎ、救いを求めていた。兄であるトレゾールはに、国を導く力はなかった。国を発展させることが出来ないなら、それは王ではない。
「僕が、導く」
この女神の力を持ってして、神話を実現させる。否。神話の続きを創ってみせる。
大地が豊かにならずとも、この宝石があれば国を発展させるには十分だった。
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作者名：酒粕 | 作成日時：2022年8月18日 1時
