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ジェム王国
場内
「先程のご無礼をお許しください」
国王軍の1人に頭を下げられたAは、既にもう先程のダンスシューズとヴェールではなくいつもの真っ白なドレスへに着替えさせられた後であった。
『構いません。それよりも、あの方達は一体どうなるの？』
「地下牢へと。2日後の聖誕祭には天竜人の方々を護衛しに海軍もやって来ます。その際に引き渡そうかと」
『地下牢？！あの方達は海賊なんでしょう？その、叔父様と同じ所なんて…叔父様が、トレゾール様が危険なんじゃ、』
「─────A」
そこへ、いつの間にか現れた男。
『…お父様、』
「あの男の名を口にするのは辞めなさい。」
Aが目を伏せる。
「お帰りなさいませ！ロワイユ国王陛下！」
「おい、Aがキャバレーで海賊達に踊らされていたというのは本当か？」
「はい！海賊共は既に捕らえて地下牢へと」
『ちょ、ちょっと待って！』
Aが兵士へと詰め寄る。
『どういうこと？！』
「A様は視察の為に町へ繰り出したところを赤髪海賊団に捕まり、キャバレーで無理やり踊らされていたと、あの方から報告を受けています」
『違うわお父様！私が踊りたくて踊ったの！』
「A」
気を失いそうな程の威圧感。ここに武に通じる者がいればそれが覇王色の覇気であったと気づいただろうが、今この場にそれを知る者はいなかった。
「だから外に出てはいけないと言っているだろう」
『でも！』
「A」
『っ、』
俯いてドレスをギュッと握りしめるAの頭に手を置いて、父であり国王であるロワイユは耳元で囁いた。
「A、お前は愚かにもまた僕の言いつけを破って外に出た挙句、海賊に無理矢理キャバレーで踊らされた。そうだね？」
『ちがっ、』
「そうだね」
何故いつも父に逆らえないのか、Aは悔しさに涙を浮かべながら、目を閉じた。
『…はい』
するとロワイユはわざとらしくニコリと笑って見せた。
「うん、死刑だな」
『え、』
「このジェム王国の女神である私の娘の神聖な舞を、あろうことかキャバレーなどで踊らせた赤髪海賊団は死刑だ。僕が許す」
2日後、あの男と共に公開処刑だ。そう言って笑う父が、Aには人でない他のナニカに見えた。
「さてA、夕食にするとしよう」
差し出されるその手を取るしかないのだと、Aはもう知っている。自由など、ないのだと。
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作者名：酒粕 | 作成日時：2022年8月18日 1時
