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夏「あぁ、そっか。」
壁に手を付きながらようやく立ち上がる。
夏「まぁでも、この残穢の付け方的に本気だろうね。初めて見たし。何処も彼処も悟の匂いがするよ。」
『はっ、最高ね。』
夏「はは、」
夏油は乾いた笑いを漏らし私の胸ぐらを掴んだ。
夏「決めた。君は誘拐しよう。人質だ。悟の焦る顔が楽しみだよ。」
そう言うと私を自分の使役する呪霊に掴ませた。
『は、?』
夏「ま、私の目的が達成されるまでそこで見ててよ。」
壁に打ち付けられた背中も痛い、呪力はまだある筈なのに何故か使えない。
瘴気が私の身体を蝕んでいくような、そんな感覚。
憂太が私たちのいた所に来て、棘が逃げる様に言った時意識が底に沈んだ。
コツコツ、という足音と共に揺れる身体。誰かに抱えられてどこかを歩いてるんだな、と理解してさっきまで何してたっけ、と思い出そうとする。
夏油に人質にするって言われて、それから呪霊に身体を掴まれて動けなくなって、呪力も吸われて瘴気が身体に回るのも呪力で守れなくて、それで、憂太が、
『っ、ゆ…うた、』
五「…感心しないね。僕に抱きかかえられながら他の男の名前を呼んで他の男の残穢をこれでもかってくらい身体に纏わせて。」
『さとる、?まき、は?』
夏油は?他の1年はどうなったの、と聞きたいのに中々声が出ない。頭の上から降ってくる声。言葉はいつも通りなのに声色が冷たい。
五「皆無事だよ。憂太が祓った。君が捕まってた呪霊も祓って君が纏ってた瘴気も僕が到着した時には祓ってた。」
『そっ、かぁ』
どこまで瘴気が回っていたのかは分からないけど、話そうとしても言葉が詰まるから結構あぶなかったんだろうな。
『……あ、いつ、つよかった。
わたし、なにもでき、なかった。
みんな、が、ぼろぼろ、になってるのに、わたし、まもれなかった、』
呟くぐらいの声でそう言うと悟は黙って聞く。
『つよ、くなったつもりでいた。じぶんでも、ひとをま、もれるっておもってた。』
今度は涙をぐっと堪えようとして言葉が詰まった。
『なげとばされた、だけで、動けなくなって、…悟とのかんけい、バカにされて、からだっ、勝手にさわられても、なにも、できなかった、』
がまんしてもがまんしてもぽろぽろ溢れ出てくる涙が頬を伝ってボロボロの服に落ちていく。
『ほんと、ざこすぎてわらえる』
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華渚(プロフ) - あやさん» うわーーーーん!!いつかできることを願ってます!(泣) (2021年7月23日 20時) (レス) id: c7e672e97b (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 占ツク内検索の検索設定、やっと見つけました! でも…コンテンツフィルダリングは「行わない」になっていました。最後の砦が…(号泣) 私だけ入れない帳が降りているとしか考えられません(ToT) 色々と可能性を考えて下さりありがとうございましたm(__)m (2021年7月23日 20時) (レス) id: 7f35e3342c (このIDを非表示/違反報告)
華渚(プロフ) - あやさん» 作品を検索する時にワードを入れるところの下にあります! (2021年7月23日 20時) (レス) id: c7e672e97b (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 「ページ/検索に表示」はONになっています。占ツク内検索の検索設定はどこにありますか? (2021年7月23日 20時) (レス) id: 7f35e3342c (このIDを非表示/違反報告)
華渚(プロフ) - あやさん» ページ/検索に表示ってONになってますか?後は占ツク内検索の検索設定でコンテンツフィルダリング行わないにするくらいしか思いつかないです……。ごめんなさい(泣) (2021年7月23日 17時) (レス) id: c7e672e97b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華渚 | 作成日時:2020年10月28日 21時