28.初上陸 ページ28
わたしには家族はほぼいないようなものだけれど、卓には家族がいる。
「きてしまった・・・」
降り立ったのは福岡空港。
今日の試合のチケットは事前に卓に貰って、ホテルの住所まで教えてくれた。
------「部屋、俺と一緒にしておいたから」
職権乱用っていうんじゃないかな、こういうの。
とはいえ、初めて来た九州にテンションが上がった。
ホテルにチェックインを済ませて荷物を預けてから、少し市内を見て回る。
九州名物を食べたいけれど一人で入るのには気が引けて、全国チェーンのコーヒーショップに入り、バスでヤフオクドームへと向かう。
バスの中にはホークスファンだけではなく、ファイターズのファンの人がたくさんいて、少しドキドキした。
自分ってすごい人と結婚しようとしてるんだ。
ひとの流れに合わせて球場へと向かい、関係者入り口を探す。
「あの〜、すみません。このチケットで入れるところ探してるんですけど。」
「まだ開場時間ではございませんので、入場はできません。」
「あ、そうじゃなくて、その、中に知り合いがいて」
「困ります。まだ入場できる時間ではございません。」
「そうじゃなくて、あの、このチケット」
「皆さん同じ時間の入場です。」
「関係者入口ってどっちですか?」
「・・・。警備さん〜!!!こっちです!」
「いや、あの、怪しい者ではありません!!」
いかつい制服に身を包んだ警備員がやってきて私の両脇を掴む。
「待ってください!わたし中にいる選手の・・・」
「君みたいな過激なファン、たまにいるんだよ。」
「ファンじゃなくて!・・・いや、ファンでもありますけど・・・」
「はい、こっちで詳しく話聞くからね。」
中に入って、卓と監督さんに挨拶をしないといけないのに、ファンと勘違いされて連れていかれそうになる。
すると・・・
「ん?何かあった?」
とっても体の大きい人がきて、
「あ!柳田さん!」
「女の子困ってるやん?やめたげたら?」
「いや、この子はファンの」
「なんか違うっぽいっすけど。」
「え、いや。」
「誰かの家族なん?」
「あ、中島卓也の・・・」
「そっか。じゃあ俺連れてくわ。いいやろ?」
「え、柳田さん、ダメですよ。」
「いいのいいの。今から俺の連れだから、手離してくれる?」
柳田、と呼ばれた人のおかげで助かった。
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作者名:ずゅん | 作成日時:2017年9月9日 0時