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25.生い立ち ページ25

「もしもし、お母さん?うん・・・あのね、報告があって・・・」



わたし、結婚を申し込まれたの。

そう言うと電話の向こうで泣いていた。


相手はプロ野球選手で、私が誰より憧れていた人。
彼と一緒に住むことを許してほしい、と報告をした。

まだ、卓にも伝えていない私の生い立ちは決して明るいものではないから、
私もただ憧れていて大好きで、キラキラ、ドキドキだけではいけないと思った。





「今度Aのご両親に挨拶しないと。」

お互い仕事を終えて、今日は私のおうちでご飯を食べていた。
卓はわたしの両親に挨拶をしたい、と言った。

「それがね、卓。」

箸を置いて真剣な顔をした私に、さっきまでニコニコしてた卓の顔も少し曇った。


「わたし、母親しかいないの。」

「・・・」
「それに、その母親も本当の母親じゃない。私、自分の本当の親の顔はあんまり記憶にないんだ。」
「・・・何か事情があるんやね。ご飯終わってソファーで話しよ。」
「うん・・・」





もうほとんど終わっていた食事の片付けをしてから、卓に手を引かれて私の家のソファーに二人腰掛けた。








そこから、
わたしの母親はわたしが生まれたと同時に病気で亡くなって、そのあと父と父の実家で育てられたこと。


そこには父のお姉さんがいて、ほとんどその叔母に育てられたこと。


迷惑をかけたくなくて、たくさん勉強をして特待生で全寮制の女子高に入り、それからずっと札幌に住んでいること。



毎日が生き辛かったとき、TVで中島卓也という人物を知ったこと。






好きになってしまったこと。



「わたし、恵まれた人生じゃなかったし、卓が結婚したいと言ってくれたこと、
心の奥底から嬉しかったけど、私、自分に自身なんて全然無いから、」


自分の話、今まで人にしたことなかった。

する機会なんてなかった。


涙でぼやけた視界に卓の笑顔が映った。



「そうやったんやね。その話、してくれて本当ありがとう。緊張したやろ?」
「うんっ・・・」

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作者名:ずゅん | 作成日時:2017年9月9日 0時

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