青春めると (ページ12)

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名前ページ12

「にーちゃんが洒落込んでる」

　朝の洗面所、髪を整えているシンヤをシンヤ(弟)がドアに半身を隠しならじいっと睨んでいるのが写っていた。
　洒落込んでいる、というのを完全には否定できず照れ臭くなったシンヤは前髪をくしでとかしながら振り返る。

「すぐ退くからあっちいってろ」

「彼女とどこ行くの？」

「……彼女て」

　彼女ではない。が、これまで一緒に生活してきた仲なので最早同棲しているといっても過言ではない相手であることは間違いない。
　その証拠が今だ。ただの友人と映画に行くのに格好なんてそこまで気にしない。もっと言うなら昨日の夜、寝起き通話さえした。

「彼女の名前は？」

「彼女じゃないからな。シュンタだよ」

「どこ行くの」

「映画。ワン◯ース」

　「えええ〜っ！？」とシンヤ(弟)の悲鳴がある。ガラリとドアが開いて入ってくるとシンヤの足にぎゅううっとしがみつく。

「やだやだ、おれとは行ってくれないくせになんでシュンタなんかと行くの！」

「お前シュンタのこと知らないだろ」

「おれと行ってよ！！」

　シンヤ(弟)が喚くのもわかる。これまでアニメ関連の映画を見に行く時は必ず弟と一緒に行っていた。しかし弟には悪いが、先約があるわけだ。
　しかもそいつは七夕の短冊にわざわざ映画見に行けますように、と書くくらい健気だ。

「はいはい、終わったから退くよ」

「やだあ！行かないでっ」

「お前も友達と行け」

　ぷくっと頰を膨らませた弟は両手を広げシンヤの前に立ち塞がった。

「ただの友達なのにおれより優先するの！？」

　弟のなんともない発言のくせに、どくんと心臓が跳ねる。
　ただの友達じゃない。でもそれ以上でもない。この関係を何と表せばいいのか。

「……行ってきます」

「うわあああー！にいちゃんんんんん」

　よくわからないが考えるのはやめよう。
　今はまだ、親友で。

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弟くんの名前募集します。