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一人沈む緑谷に、声を掛けようとする者は居なかった。
勝ちを譲られる。ヒーローを目指す者にとって、これ程屈辱的なことがあっていいのだろうか。
緑谷の頭には、去り際の五条の心底嫌そうな顔が残っていた。目を隠してでもわかる、あの顔が。
「僕は、ヒーローなんだ。いくら君が強くて、僕に叶わない相手でも、戦わなきゃいけない。君も、そうだろ！？」
「…え？」
「五条くんは、ヒーローになりたくて雄英に来たんじゃないか。なのになんで、僕に勝ちを譲ろうとするんだ。五条くんだって、ヒーローじゃないか！」
ヒーローにはなれないという五条の言葉。
雄英は才能を持つ者が集まる場所だ。そこで五条は挫折してしまったのだろうと、緑谷はそう解釈した。だからそう言ってしまった。悪意一つない言葉だった。
それが、五条の地雷であることを知らずに。
「うわ、ウザ」
そう言った途端、緑谷の目の前にいた五条は消えた。
一瞬の出来事だった。瞬きの間に、五条は場外に居た。騒然とする会場。取り残された緑谷は、こちらを一瞥し、何も言わずに去っていった五条の背中を、ただ見つめることしか出来なかった。
ヒーロー。それは英雄。
誰もが憧れ、目指す存在。
緑谷にとってヒーローはそんな存在だった。生きる力だった。でも、五条は違ったのだ。理解ができなかった。
ヒーローだと言ったら、嫌悪感を示された。
五条くんはヒーローが好きでは無い。の、なら、ヴィラン…？いや、でも五条くんに限ってそんなこと…、もし、五条くんがそうだったら、Aちゃん達も、ヴィラン側、だったり、するのかな。
緑谷にとってヒーローは正義で、ヴィランが不義であることは当たり前だった。
それが、呪術師であった彼らの価値観とはまるで違うことに、気付くはずも無かった。
ー
「酷いことするよね、悟も」
「愛情の裏返しだよ」
「緑谷は五条の生徒じゃないだろ」
「いやー、そのはずなんだけどね〜」
「…悟に気に入られたのか、可哀想に」
「オイ可哀想にってなんだよ」
まだ体育祭は続いている。
しかし仲間の出ない体育祭に何の魅力も感じない彼らは人混みから離れた場所で休憩していた。
人混みは苦手だ。あのような熱気だけは、どうも受け付けられない。夏油に限らず、他三人もそう思っていた。
「…あの、すみません」
うん、来ると思ってた。
五条はほくそ笑んだ。
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く - また戻って来ちゃいました…！！本当にいつ読んでも面白くて飽きません！！この小説が大好きです！！ (3月26日 11時) (
レス) id: 2886bd5eaa (このIDを非表示/違反報告)
a - 何回も読み返してしまうほど設定がしっかりしていて解釈の仕方が納得できたりしてしまう程大好きな作品です更新待ってます (3月22日 5時) (レス) @page41 id: 125b1c80a3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - え、おわり？？？え？？ここで？？？え (3月14日 0時) (レス) @page41 id: a785fb42c2 (このIDを非表示/違反報告)
甚嘉 - このお話とても大好きです！私はさしす組推しなんですが、夢小説ではよく硝子さんだけ距離を感じるものが多くて…だけど、この作品は4人の友情が綺麗に描かれていてとても惹き込まれました。これからも頑張ってください！ (2月16日 21時) (レス) @page41 id: c9696c8440 (このIDを非表示/違反報告)
r(プロフ) - この作品大好きで大好きで…初期の頃からずっと追いかけてました…久しぶりに見たら更新されてるなんて…夢中で読みまくりました、、更新ずっと待ってます…作者さんの書く作品が大好きです (1月13日 18時) (レス) id: 892520834f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年6月11日 21時
