･ ページ9
．
「質問を変えよう！君たちはヒーローが嫌いかい？」
「別に」
根津は四人の行動、仕草から彼らの人格を見出そうとしていた。
自分の質問に答えるのは五条のみ。
そこに彼らの信頼が現れていた。きっと彼らは五条の答えについていくのだろう。となれば、この中で最も権力を持つのは五条なのだろうか。確かに五条はかの有名な五条家のご子息。しかし、それだけなのだろうか。
五条は先程から質問の答えを言わない。のらりくらりと交わすだけだ。根津はその頭を持ちながらも、彼らの思考が全く読めなかった。
それもそのはず、彼らは何も考えていなかった。考えているとしても、今日の晩飯なんだろうレベルだ。
根津がさて、どうしようかと考えているところで相澤の口が開いた。
「お前たち。今生徒の間で流れてる噂知ってるか」
「どれのこと？ヴィランのやつ？」
「ああ。お前らはそれをどう思ってる」
「どうとも」
「…五条の答えはわかった。他の三人は？」
「こいつらもどうとも思ってねぇよ」
やはり、答えたのは五条だった。
相澤は五条を睨んだ。蒼い瞳が相澤を射抜いた。
「何が言いてぇの？アンタら」
「…僕たちは、君たちの存在を危惧しているのさ」
「…へぇ？」
「君たちがヴィランになる気が無いのはわかっているさ。ただね、僕たちが恐れているのは」
「第三勢力、的な？」
「…その通りさ。君たちにはそれだけの力がある」
「…お前らは、転び方次第でヴィランにも、ヒーローにも、違う何かにもなる。…お前らも、わかってんだろ」
相澤は、どうにも彼らにヒーローらしさを見つけることが出来なかった。彼らの思考はヴィラン寄りだ。恐ろしい程、現実主義者だ。何かを、求めてなどいない。
彼らはきっとそれをわかっている。ヒーロー社会で生きてきて、自身の考え方がズレていることなど既に気づいているだろう。このまま野放しにすれば彼らは道を間違えてしまう。それだけは避けたい。相澤の、彼らを思う故の発言だった。
「…ハッ。なんだっけ、相澤先生？」
「…なんだ」
「俺らはもう
あそこで生きた記憶は。得た知識は。
呪霊だけじゃない。人だって殺して来た。
そんな彼らが、どうヒーローになるのだろうか。どう、ヴィランになるのだろうか。どうして、正義を掲げることが出来ようか。
いや、出来ねぇだろ。そう五条は笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4078人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
く - また戻って来ちゃいました…！！本当にいつ読んでも面白くて飽きません！！この小説が大好きです！！ (3月26日 11時) (
レス) id: 2886bd5eaa (このIDを非表示/違反報告)
a - 何回も読み返してしまうほど設定がしっかりしていて解釈の仕方が納得できたりしてしまう程大好きな作品です更新待ってます (3月22日 5時) (レス) @page41 id: 125b1c80a3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - え、おわり？？？え？？ここで？？？え (3月14日 0時) (レス) @page41 id: a785fb42c2 (このIDを非表示/違反報告)
甚嘉 - このお話とても大好きです！私はさしす組推しなんですが、夢小説ではよく硝子さんだけ距離を感じるものが多くて…だけど、この作品は4人の友情が綺麗に描かれていてとても惹き込まれました。これからも頑張ってください！ (2月16日 21時) (レス) @page41 id: c9696c8440 (このIDを非表示/違反報告)
r(プロフ) - この作品大好きで大好きで…初期の頃からずっと追いかけてました…久しぶりに見たら更新されてるなんて…夢中で読みまくりました、、更新ずっと待ってます…作者さんの書く作品が大好きです (1月13日 18時) (レス) id: 892520834f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年6月11日 21時
