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「……おい、」
「全く、何度も言ってるだろ。君はもう少し態度を改めろ」
「急に正論かましてんじゃねーよ、キッショ」
次は五条がストレートを決める番だった。
突然始まった殴り合いに相澤は深く息を吐くしかなかった。まるで聞く耳を持っちゃいない。放送室からでは相澤の捕縛布も使えない。相澤は、自分の言葉では止められないことを悟ってしまった。
「おい、誰かアイツらを止められる奴はいねぇのか」
彼らを止められるのはきっと夜蛾一人だ。
彼らの先生は今でも変わらず夜蛾だった。夜蛾にとっても、彼らは大切な生徒だ。自分が無力な故に残酷な道を歩ませてしまった、生徒だった。
夜蛾はこの闘いが五条に、そして夏油にとって良いものになると理解していた。だから彼らを止めようとは思わなかった。
むしろ、殺れ。そう思っていた。
「善い子ちゃんぶってんじゃねーよ」
「はは、そう見えたなら光栄だね」
「は？ウザ」
「…私はね、悟。せめて今は善い子で居たいんだよ」
「…脳ミソ腐ってんのか、お前」
「っ、」
一瞬の隙を詰め寄られた夏油は五条に上手く反応ができなかった。
そのまま足を上手く引っ掛けられ、夏油は五条の下敷きになった。長い黒髪が地面に散った。
五条の左手は夏油の顔の横につき、右手は胸ぐらを掴んでいた。見下ろす五条に負けじと夏油は睨み返す。
「ぃ、ったいな」
「お前は、人を殺した」
「……なんだ、いまさら」
「お前はそれを一生償う必要がある」
「…ハッ、教師ぶってるのか？」
夏油は人を殺した。
夏油にはもう分からなくなっていた。自分は悪者であった。それが正しい道で無くても、夏油にとっては自分が歩むべき道だった。それが正しい道だった。
でもこの世界に来て、純粋にヒーローを追い続ける者達に出会った。出会ってしまった。
自分は人を殺したのだと、人殺しなのだと、その事実だけが夏油の身体を延々と取り巻いていた。彼らに裁かれるべき人間なのだと、考えるようになってしまった。
ここにいるヒーロー志望の人でも、五条達のような真っ当な呪術師でもない。自分は何者であるべきか分からなくなってしまった。
呪詛師。
五条や八雲、家入が自分を完全に許している訳ではないと夏油は分かっていた。彼らはきっと夏油のストッパーの役割も担っている。言わば、監視だ。
私はまたここにいる人を殺すのだろうか。
もう、分からない。
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あお - 間の開け方とか言葉選びとかすごい良かったです！！ (2022年8月28日 20時) (
レス) @page18 id: c1da01ed72 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 呪術師側のイカれ具合とか、ヒーローに対する嫌悪とか、全て大好きです。 (2022年1月2日 15時) (レス) @page50 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
あかし - あくまで私個人の感想です。書き方やオチ希望してる方がいますがこれは作者様の作品です。書き方も展開も終わり方も全て作者様の自由です。私はこのままの作品が好きですし、作者様の自由にして下さい。言葉選び、文脈全てが大人で素敵です。これからも応援しています。 (2021年8月7日 14時) (レス) id: 9951821a6a (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年2月11日 11時
