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夜蛾は深くため息を吐いた。
未だぎゃいぎゃいと騒ぐ姿は何年経っても変わっていなかった。
夜蛾の生徒は、確かに今此処にいる。
確かに今此処で、笑い合っている。
じっと彼らを見ていると視線に気づいた八雲と家入は五条にちょっかいをかけるのを止め、それに即座に気づいた夏油もそれを止めた。
残された五条は何が何だか、という顔をしていたが異様な空気を察したのかすぐに元いた位置に戻った。
「…お前の言いたいことは伝わった」
夏油は直接言葉にはしていないものの、それはきちんと夜蛾に伝わっていた。
夏油はここで、彼らと共に生きることを望んでいた。
かつては敵となった。
敵となり、殺し合った。
夜蛾はその現場を見ていなかった。
見たのは無愛想な活字で埋められた報告書のみ。
彼らが何を思い、何を感じ、どう殺し合ったかなんて夜蛾には到底分からなかったし、分かろうとも思わなかった。
きっと辛かったであろうなんて安い同情はしたくなかった。
夏油はこの世界に戦う理由は無いと言った。
それは、他の三人もまた同様だった。
もう、世界に抗う理由などどこにも無いのだ。
遊園地でも水族館でも動物園でも好きに行けばいい。好きな時に遊びに行けばいい。好きな時に、好きなことをすればいい。
命に、怯えなくてもいい。
「悟、A、硝子…傑」
散々悩み、もがいて、苦しんだ。
彼らに悔いのない死などどこにも無かった。
それでも彼らはその道を選び、歩いた。振り返ることはあっても、止まることは決して無かった。
もう、その枷を外してもいいのだ。
「ようこそ雄英へ…入学おめでとう」
四人は瞠目した。
彼らにとって、夜蛾からのその言葉は何よりも嬉しいものだった。
呪術師になった時は夜蛾からの祝福の言葉などなかった。あったのは覚悟を問う言葉と、遺書の用紙だ。
平和な世界になったのだと、昔よりもずっと息のしやすい世界で夏油は笑った。
「さて、オマエ達は精神年齢で言えば………いや、生きてきた年月だけは他の生徒よりも上だ。ここは昔と違う。頼むから落ち着いて行動してくれ。校舎を壊すことなどないように、校庭の地面を抉ることなど無いように。落ち着いて学生生活を送ってくれ。いいな！！」
「「「「はい！！」」」」
返事だけは元気よく。
規格外な元呪術師による雄英生活は、ようやく始まったのだった。
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あお - 間の開け方とか言葉選びとかすごい良かったです！！ (2022年8月28日 20時) (
レス) @page18 id: c1da01ed72 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 呪術師側のイカれ具合とか、ヒーローに対する嫌悪とか、全て大好きです。 (2022年1月2日 15時) (レス) @page50 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
あかし - あくまで私個人の感想です。書き方やオチ希望してる方がいますがこれは作者様の作品です。書き方も展開も終わり方も全て作者様の自由です。私はこのままの作品が好きですし、作者様の自由にして下さい。言葉選び、文脈全てが大人で素敵です。これからも応援しています。 (2021年8月7日 14時) (レス) id: 9951821a6a (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年2月11日 11時
