ヒーローにはなれない ページ1
ブランコの揺れる音、地面を蹴る軽やかな音、子供を宥める親の声、見つめ合ったまま口を開かない子供が四名。
一人は日本人離れした白髪の少年。
一人は黒髪ロングの少年。
一人は黒髪ボブの少女。
一人はこれまた日本人離れした亜麻色髪の少女。
ただじっと、公園の隅で彼らはお互いを見つめていた。
その光景はまるで小学生の成す雰囲気では無く、周りにいた大人が心配そうに彼らを見つめていた。
その視線に耐えられなくなった者が一人、ぽつりと言葉を漏らした。
「あー、なに、お前らいたの？」
うざったそうに言いつつも何処か嬉しそうな彼──五条悟の言葉により、今の今までだんまりを決めていた少年少女がそれぞれに口を開き、語り始めた。
「
「日本有数の名家の一つ、五条家ね。まさかとは思っていたけど、案外近くにいたものだね。」
「私は硝子と会った時点で薄々気づいてたよ」
「は？何？オマエと硝子会ってたの？」
「うん、小学校同じなの」
かつての仲間達との再会に彼らは嬉々としていた。
それもそのはず、和気藹々と話す彼らにとって、このメンバーで再び集まるだなんてことは夢のまた夢の話であったからだ。
「つーかさ、俺ら、死んだよね」
「うん、死んだね」
「私は悟に殺されたね」
「え、そうなの？」
なんて物騒な、と思うかもしれないが彼らが口出す言葉は紛れもない事実であった。
そう、少年少女達には、いわゆる前世と呼ばれるものが存在した。
呪いが蔓延する社会。
人は死に、遺体が残ることは奇跡とも言える。
そのような社会で彼らは生きていた。
その中で四人は、高専と呼ばれた呪術専門の高校で同級生だった。
特殊な世界、故に同級生は四人しか居なかった。
たった四人、一人一人が大切な存在であった。
しかし、一人は道を違った故に殺し合い、一人は腐れ切っていた上層部の思惑により殺され、残った二人も闘いの末その命を落としていた。
「輪廻転生ってやつかな、私宗教入ってなかったのに」
「夏油はともかく、な」
「私も入ってないからね」
「は？夏油様とか言われてたくせに？」
「あれは…、いや、私は止めようとしたんだよ」
夏油は、懐かしむように、娘のように大切にしていたあの双子を頭に思い浮かべていた。
そういえば、彼らはどうしたのだろう。
ここに、この世界に居るのだろうか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2670人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あお - 間の開け方とか言葉選びとかすごい良かったです！！ (2022年8月28日 20時) (
レス) @page18 id: c1da01ed72 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 呪術師側のイカれ具合とか、ヒーローに対する嫌悪とか、全て大好きです。 (2022年1月2日 15時) (レス) @page50 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
あかし - あくまで私個人の感想です。書き方やオチ希望してる方がいますがこれは作者様の作品です。書き方も展開も終わり方も全て作者様の自由です。私はこのままの作品が好きですし、作者様の自由にして下さい。言葉選び、文脈全てが大人で素敵です。これからも応援しています。 (2021年8月7日 14時) (レス) id: 9951821a6a (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年2月11日 11時
