プロローグ １ ページ1
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強い風が窓を叩く。
その激しい物音で、目が覚めた。
ちょっとやそっとじゃ起きないことで有名な俺が起きるなんて、相当やで。
喉が渇いたことに気づいて、ベッドから抜け出してキッチンへ向かう。
寝室を出るときにぶつけた足の小指が、なかなか痛い。
もうこれは、明日歩かれへんかもしれん。
もうこれは、仕事なんてしとる場合やないわ。
『店長、足の小指が痛いんで休みます！』
『そうかそうか、無理したらあかんで！』
なんてことに、なるわけあれへん。
冷蔵庫の中の水を出して、少し飲む。
窓の外はまだ暗いらしく、カーテンの隙間からも明かりが差し込んでへん。
暗がりに慣れてきた目で時計を見ると、針は3時過ぎを指していた。
あと5時間は寝れるで。
寝室に戻って、カーテンを少し開けて外を見てみる。
風が強いだけで、雨は降ってへんみたい。
台風がきていることは、天気予報で知っていた。
だから横山くんには、言うたんやで。
「外の鉢植え、中に入れといたほうがええで」って。
あ、横山くんってのは俺が働いとるカフェバー『eight』の店長やで。
横山くんのことやから忘れとるんやろな。
抜けてんねん、そういうとこ。
ロシア人みたいな見た目でカッコイイのに、そない抜けたとこもあるなんてカワイイ〜！
とか言うて、ギャップに弱い世の女性には受けるんちゃう？
でもな、毎回毎回そんなんやられたら嫌んなるで。
店の鍵忘れて入られへん！言うて、休みの日に何度叩き起こされたことか。
ほんで、鉢植えの片付けするん、どうせ俺やで？
次に起きた頃には、もう落ち着いてるやろうか。
横山くんのせいで片付けがあるやろうから、頼むわ。
寝ぼけながらそんなことを考えて、俺は再び眠りの世界へ旅立った。
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作者名：ずみ | 作成日時：2017年9月19日 0時
