無免許医男主 ページ10
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深夜にニコチンが恋しくなって窓を開ける。
ジッポにゆらゆらと橙を灯らせ、口にくわえた煙草に火をつけた。すうう、と息を吸い込むと旨みが肺いっぱいに広がって、身体中で生を実感できる。
この時間が何よりも至福だった。
自ら身体を痛めつけるこの行為が愚かしいとは思うけど、そうでなきゃやっていられないのもまた事実である。
窓枠に肘を置いて灰を窓の外に落とした。下から「アチッ」と声が聞こえてAはギョッと灰が落下した辺りに目をやる。
「ロディ？どうしたこんな時間に。ガキはもうとっくに寝る時間だぜ」
そこには見慣れたお客様がいた。
名をロディ・ソウル。未成年にして幼い弟妹たちを養うために日々オセオンの街を駆け回る可哀想な少年だ。
数年前、川の水を飲もうとしていたところを寸での差で止めたときからの知り合いである。
とんだジサツ願望者に出くわしたと己の不運を嘆いたが、自分の飯を弟妹たちにあげたから腹が空いたのだと聞き、哀れに思って家に招いたのが始まりだ。
「うっせ、いつまでもガキ扱いすんなよ」
「そう言い返す内ァ子供なわけよ。んで、何の用だ？」
問いつつも、Aには分かっていた。
オセオンの郊外にあるこのスラム街で暮らすにあたって、怪我や病気はつきものだ。
整備されていない道や突き出た鉄筋などによってできる傷は本当に小さなものだが、傷口から入り込んだ細菌が体の中で増殖し、病気になることが多々ある。汚染されたスラムは細菌の温床だった。
スラム街の住人たちが飢餓の次に恐れるのが擦り傷である。
ただ、お金も信頼もない彼らが町医者に頼れるはずもなく、そうして覚悟を決めて訪れるのが無免許医のAのところだった。
なんせ無免許なので、治療に失敗する可能性がある。だから覚悟が必要だ。
運び屋として道無き道を走るロディが怪我をしないわけがない。
ここに来たということは、そういうことだろう。
「ちょっと、しくじっちまって」
「ほーお。つい先日も来なかったか？足を切っただのなんだので」
ちょっとの間があって、それからロディは気まずそうに立ち上がって右足を指した。
そこには先日巻いてやった包帯の隣に新しい傷が何本か入っていて、Aは「ど阿呆」とロディを小突いてから、家に上がるように指示を出した。
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緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
