魔法使い男主 ページ6
＊
「おにいさんマホウツカイなの！？」
Aと出会ったのは、圧紘が高校生のときだ。
個性の使用は一般的に禁じられているため、誰もいない公園で個性伸ばしをしていた圧紘は突然の大声に肩を跳ねさせて振り向く。
そこには、小学生にも満たないほど小さな男の子がいた。男の子の右手には葉のない木の枝が握られており、絵に書いたような子供だ。
木の枝は個性を使用したことで鞄のなくなった、圧紘の手元を指していた。
「魔法使いってわけじゃないけど……ああいや、ウン。魔法使いのお兄さんだよ」
「やっぱり！ぜったいそうだと思ったんだ！」
わっと飛び跳ねて近づいて来る男の子に、圧紘は元気だなあと少し眩しく思った。
圧紘が魔法使いであることを容認したのは、この子供を手篭めにして個性を使っていたことを黙っていてもらおうとしたからだ。
男の子は名をAと名乗り、他にはどんな魔法が使えるのかとキラキラとした目で圧紘に訊ねる。
「ごめんな、まだこれしかできねェのよ」
「シュギョウチュウなの？」
「そうそう。こうやって物を仕舞ったり出したりする魔法」
「すごー！」
これしかも何もないが、適当を言っても目をまん丸に見開くAに圧紘は気分が良くなる。
騙している事実に心がちくりと痛んだ気がした。
「おれまだなんにもでなくて…ママもパパもおかしいねって、ちょっとこわいんだ」
「Aはいま幾つなの？」
「3さい」
「嘘だろめっちゃ流暢に喋るじゃん」
「？」
ベンチに腰掛けて、自販機で買ってやったオレンジジュースのペットボトルを握りしめながらAは首を傾げた。
圧紘は最近の子供は発達が速ェんだなと事実に驚きつつ、「あと1年あるから大丈夫だって」と無責任な言葉を投げかける。
それが吉となったのか、大いにAは圧紘に懐き、放課後に圧紘が公園を訪れると必ずAがいるようになってしまった。
唯一の嬉しい誤算は、Aがとても素直な子供だったことだ。
圧紘が「魔法使いってことがバレたら捕まっちまうからママやパパにも内緒だぜ」と態とらしく声を潜めると、Aはやけに真剣な顔をしてコクコクと何度も頷いた。
Aと圧紘の交流は1年ほど続き、圧紘が高校を卒業すると同時に2人の交流は止んだ。
しかし、それは唐突に起きたことではなく、事前に会えなくなることを伝えていたため、去り際にAは「おにいさんみたいなりっぱなマホウツカイになる」と豪語したのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
