お天気お嬢ちゃん ページ5
＊
デビューから数年。
からりと晴れた九州の上空をパトロールするホークスは、地上から聞こえた己の名を呼ぶ幼い声に下降した。いつもなら手を振って去るところだが、子供となれば話は別だ。
近づくと、ホークスを呼んだのは可愛らしいパステルカラーのワンピースに身を包んだ女の子だった。
ぴかぴかのランドセルから、小学1年生辺りかと目星をつける。
「俺のこと呼んだ？」
「うん。あんね、これあげる」
ずい、と小さな手で差し出されたのは淡いピンク色の折り畳み傘。
目立った汚れも使用感もなく、ほとんど新品に近い状態のそれに、ホークスは目を白黒させた。
「もうすこしで雨がふるばい」
「雨？こんなに晴れてるのに？」
「うん。かぜひくんヤやろ」
ほらと突き出された傘に、ホークスはうーんと困った。
こんなに良いお天気なのに雨が降るとは思えないし、かと言って女の子の傘を貰うのも気が引ける。傘を渡した状態で家に帰ったら母親に怒られるかもしれないし(ホークスにまともな母親はいないので想像だけど)。
でもそれと同じくらい、受け取らないのも怖い。
ホークスは子供が嫌いではないが、あやすのが得意かと言われれば、その内ではなかった。
「分かった。じゃあ事務所ん戻って傘取ってくるね。だからそれはお嬢ちゃんが使って？」
事務所の方向を指して言えば、女の子は「はぁい」と素直に頷いた。どうやら傘をあげたかったのではなく、ホークスが濡れてしまうことを危惧してくれたようだ。
言ってしまった手前、1度事務所に戻ってレインコートを持ってこなければならない。剛翼を操り空を行くホークスは、風圧の関係で傘を持つことができなかった。
「ぜったいぜったいばい？」
「うんうん。ぜったいぜったい」
「テレビで確認するけんね。ずぶ濡れヒーローやったらクラスんみんなにゆーてしまうかも」
「そりゃ勘弁して欲しかね…」
ニッコリと良い笑顔を浮かべた女の子に「ほらもう帰りなさい」と背を押して、ホークスは小さくなる女の子の背を見送った。
それから事務所に戻り、青空の中レインコートを着てパトロールする様子を街の人々は不思議そうに見ていたが、30分ほどで土砂降りの大雨が降ったことでホークスには先読みの力があるのかと話題になった。
数日後、再び出会った女の子にホークスがお礼を言うと、腰に手を当てて「当たり前やろ」と自慢げに笑ったのだった。
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緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
