優しくなりたい少女 ページ25
＊
いつの時代だって、優しい人は損をする。
「ねえ、そう思わん？……お茶子」
縋るような両の瞳に涙を浮かべるAに、お茶子は何も返してやれなかった。
お茶子とAは小学校に入学する前からの幼馴染みだ。
クラスメイトの緑谷と爆豪のようにギスギスとした関係ではなく、自他共に認めるニコイチの仲良しペア。進路の関係上、高校だけは離れてしまったけどお茶子が入寮した後だって連絡は取り合っていた。2年生に上がる前の春休みには2人で旅行に行こうなんて夏から計画を立てて、長期に渡るインターンだって頑張れた。
高校に入学してから色んなことがあってたくさんの出会いがあったけれど、お茶子が親友と胸を張って紹介できるのはAだけだ。
距離の近い人に限り茶化し癖のあるお茶子が「さっすが私の親友！」と腕を組めば、照れ隠しにそっぽを向いてしまう、かわいい子。
その耳が真っ赤に染まっていることをお茶子はちゃんと知っている。
ことある事にお茶子は優しいだの私とは違うだのと持ち上げてくる親友は、心からお茶子のことを誇りに思ってくれていた。
そんな彼女だって優しくて心がつよい人だとお茶子は自信を持って欲しかった。お茶子もまた、ひとりぼっちで鳴く子猫に傘を譲ってしまうAを誇りに思っているのだ。
ヒーロー向きの個性でないからと地元の高校に進学を決めたA。
いつでも隣に居た存在が居なくなるのは寂しかったけれど、互いのためにお茶子とAは拳を合わせた。
がんばれ。応援してる。
お茶子が地元を出る別れの日に撮ったツーショットは、今でもお茶子の待受画面に使用されている。離別の涙でぐちゃぐちゃな、一等たいせつな写真。
でも、だから、目の前の光景が目に飛び込んできたお茶子は脳内処理が追いつかなかった。
「被身子ちゃん！」
「Aちゃん！！」
クラスメイトみんなが揃った春の遠征。悲鳴と轟音が鳴り止まないそこで、お茶子はトガヒミコの加勢に来た親友と目が合った。
驚き瞠目するお茶子に対し、Aは内側から下唇を噛みながらトガヒミコの隣に立つ。
お茶子と対峙するような立ち位置はまるでヒーローとヴィランのようで、お茶子は自身がきちんと地に足をつけているのか分からなくなってしまった。
(彼女は優しい人なの。みんなのために自分を殺して、だけどダメだった。でもお茶子なら分かってくれるでしょ？ねえ、結果だけじゃなくて過程を、彼女を、被身子ちゃんを見て。おねがい)
終わり
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緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
