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小腹が空いた冬美に合わせてクレープを購入したAは、若い2人組の女性に声をかけられて顔を上げた。
「あの、もしかして"トーヤ"？」
あちゃあ。Aは苦笑いを浮かべて、それから観念して頷いた。
"トーヤ"とはAのヒーローネームだ。クレープを食べるためにマスクを顎にかけたことが、他者に身バレした原因だろう。
肯定された回答に女性たちは目を見開き、Aが止める間もなく甲高い声を出した。
ギョッとしたAと冬美が反応するより早く、先程からこちらを伺っていた人々が「やっぱり」といった様子で寄ってくる。
瞬く間に、Aたちはぐるりと八方を囲まれてしまった。
「やっば！実物も超イケメン！ビジュ良すぎ！」
「兄ちゃんトーヤやったか。そうなんちゃうんか思っとったで」
「オフのトーヤくん初めて見たあ」
「ね、ねえ、隣の人って、彼女？」
「手繋いでたしタピオカ関節キスしてたし」
「うわマジでトーヤいるじゃん！遭遇情報ってガチなんだ」
口々に喋り出した人々にAは頭が痛くなった気がした。
なんとか耳に入った情報によると、遭遇情報が出ているらしい。盗撮してネットにあげたヤツがいるな。なら、冬美の姿も写っていると考えて良い。彼女が職場で嫌な思いをしないようにするには、ハッキリと兄妹であることを開示したほうが安全だろう。
ヒーローが身内にいる危険性も考えなかったわけではないが、恋人と勘違いされるよりはマシだろうとAは考える。
隣に視線をやると、顔面蒼白の妹が「よく分からないけれどこれは不味い」と全面に顔に出していて、Aはちょっぴり思考がクリアになった。
自分よりも怖がっている人がいたら落ち着くアレだ。
「応援あンがとね。誤解されてるようだけど、この子は俺の妹な」
「あ、ど、どうも。ふ」
「おい名乗ンなバカ」
流れで自己紹介をしようとした冬美の口を慌てて塞ぐ。友人知人に紹介しているのならまだしも、彼らは赤の他人だ。それも、なにをしでかすか分からないタイプの。
これ以上の情報を与える必要は無いと、Aは自身のサングラスを外して冬美にかけてやった。
さり気なく冬美を背に隠すように移動したAに、正面に立つ女性ファンはヴッと心臓の辺りを抑えてしゃがみ込んだ。
はしゃぎすぎンなよと声をかけて颯爽とその場を切り抜けたAだったが、後日、週刊誌に切り抜かれてあることないこと書かれたのはまた別の話である。
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緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
