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日本家屋を実家に持つAと冬美は、その実、屋台で買い食いをしたことがほとんどない。
父親の方針だったか、お手伝いさんの意見だったかは覚えていないが、とにかく屋台に縁がない人生を送ってきた。
自分だけのお小遣いを持って友達と夏祭りに出かけることもあったが、これまでの経験から、なんとなく避けてきた行為だった。
だけど、今日の冬美はなんとなく、屋台でご飯を食べたい気分だった。
「A兄、タピオカがあるよ…あ、タピオカって知ってる？キャッサバっていう芋が原材料で＿＿＿」
「や、知ってるけど。もう古くね？つーか冬だぞ」
「まだまだ人気なんだねぇ」
冷えるだろうとカイロを入れたポケットの中で手を繋ぐ轟家の次男と長女は傍から見るとカップルにしか見えなかったが、天然一家の血を継ぐふたりが気付くはずもなかった。
人混みに流されながら進むAは、口を閉ざした妹の顔を見て「飲みたいんだな」と察する。
兄から古いと言われた手前、言い出しにくくなってしまったのだろう。Aは少し申し訳なく思った。
「すンません。通ります」
「えっ、ちょ、ちょっとA兄！？」
僅かに通り過ぎてしまったタピオカの屋台へと戻るため、Aは冬美の手を握る手に力を込めて人の流れを逆走する。
突然の方向転換に驚く冬美に「離すなよ」とだけ告げて、Aはぐいぐいと突き進んだ。
学校の友達と約束があると言った夏雄や、お祭りの気分ではない焦凍はいなくて正解だったかもしれないとAは思った。
この人口密度の中、兄弟全員が揃って移動することは不可能に近いからだ。
辿り着いた屋台で冬美にタピオカを買い、休憩しようかと開けた場所に出る。ベンチに空きがないほどに人がいたが、大通りに比べると断然マシだった。
仕方ないと階段にハンカチを引き、その上に妹を座らせる。
「美味しい？」
「雰囲気だよね。こういうのって」
「んふ、だろうな…一口ちょうだい」
冬美の手からストローが差し出され、Aはマスクを外してパクリと口に迎え入れた。
喉が乾いていたので貰おうとはしていたが、冬美からそんな言葉を聞いて気にならない理由がない。管を通って舌に到達したミルクティーとタピオカは、冬美の言う通り「雰囲気」だった。
「ふはっ、マジだ」
「だから言ったじゃない…ふふ」
「雰囲気料だな。初詣だし」
「初詣関係ある？」
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緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
