赤髪の氷使い ページ22
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初詣とは、その名の通り新しい年になって初めて参拝する行事を指す。
新年のしあわせを祈願する目的があり、毎年この時期の神社や寺院は浮かれた人々で溢れかえっている。
なにが楽しいのか。寒空の下ほけほけと笑みを浮かべてご機嫌な冬美を、マスクとサングラスで顔を隠したAは到底理解できそうにない。
それよりも、この人混みの中、己の正体が周囲にバレないかのほうがよっぽど気がかりだった。
「初詣なんて、A兄久しぶりなんじゃない？」
Aは、鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気で話しかけてきた妹をちらりと見る。
寒さに強い体質の冬美と異なり、父親の体質を受け継いだAは冷え冷えとした空気が苦手だ。
ダウンジャケットのポケットに突っ込んだ手は出せそうにない。
「あー…うん、そうかも」
問われて、記憶を辿る。
ヒーローとして活動するAは、先程から見かける巡回中のヒーローたちのように年末年始も休みなく働いていた。敵とまではいかずとも、大晦日や正月に羽目を外しすぎる馬鹿は大勢いるので。
去年と同じように出勤しようとしていたAは、しかし事務所のサイドキックたちに休んでくれと懇願されてしまい、ならばと冬美に腕を引かれて初詣に訪れることになった。
最後に参拝に来たときの記憶は薄いが、双子の兄であり片割れの燈矢がいたような気がする。
「ね、なにをお願いしたの？」
『A兄と燈矢兄はなにをおねがいしたの？』
ふとフラッシュバックしたそれは、何も知らずに当たり前の生活を享受していた頃の光景だった。
『冬美ちゃん、お願いごとは神様と自分以外には内緒なんだぜ』
『え、そうなの？じゃあ燈矢兄にもいってないの？』
『うん？おう、聞いてない。けど、Aが何を願ったかくらいわかるよ』
『俺も』
『ずっるーい！冬美もしりたい！』
『って言われても俺らは教えあってねェし』
『んふ、ごめんな。ナイショ』
「…そういうのって、人に言ったら効果なくなンじゃなかったっけ」
びゅううと一際つよい風が吹いて、Aは思わず身を縮こませる。身体の芯が凍るようだった。手袋をつけていても、指先の感覚は薄い。
やっぱり、さむいのはにがてだ。
鼻先までマフラーに顔を埋めるAの様子に、冬美は握っていた充電式カイロを兄のポケットに滑り込ませる。
ぽかぽかと温かいそれは、冷たくなったAの指先に痛いほど熱く感じられた。
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緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
