2 ページ21
＊
帰宅したAを迎えた燈矢は片割れの持つ白い箱にぽかりと口を開けた。
「え、なにその反応」
訝しげに片割れを見ながらも、Aの脳内にはあるひとつの仮定があった。
もしかして？Aは燈矢の目を見る。そのもしかしてだ。揺れた燈矢の翡翠が、何よりも雄弁に語っていた。
リビングに入ると、テーブルの上にはひとつの箱が置いてあった。色は白で形は長方形。
Aの持つ箱と寸分違わぬそれに、Aも燈矢もため息をつくしかなかった。
何となく隣に並べてみて、スマホでパシャリと写真を撮る。上手く撮れたか確認して、それから双子は顔を見合わせて「ぶっ」と同時に噴き出した。
だって、こんなの笑うしかない。くすくす。声を潜めて忍び笑いをしていたが、燈矢が自身の買ってきた箱を開けたことでAは声を上げて笑った。
「おまえ、うそだろ…っなんで4つも買ってンだ」
「Aがフラフラだったから」
「俺がそんな数食うわけないだろ！あーあー中身も被ってる！」
「マジで？」
「マジで」
燈矢がもうひとつの箱を開けると、そこには燈矢が購入したのと全く同じ種類のケーキが並んでいた。ひとつ違うところと言えば、ショートケーキが2つあるところだろうか。
「間違い探しじゃねンだぞ」と燈矢が呆れると、Aは「んふ」と声を漏らした。
だいたい、おまえは5つも買ってンじゃねえか。燈矢の最もな意見にAは言葉に詰まる。これには深いわけがあるので。
説明するのも面倒だが、それ以上に上手く躱せと馬鹿にされる未来しか見えなかった。
「これどうするよ。今日中だ」
「……、食うか」
「何か思いついたんだろ。ンで隠すんだ」
一瞬でバレた燈矢は恨めしくAを睨む。
解決策は思いついたが、できれば取りたくない手段だった。だけど片割れに隠し事はできないし、それに燈矢が黙っていてもきっとAは自力で辿り着く。観念して燈矢は重たい口を開いた。
「本家。たしか今日は冬美ちゃんもいたはずだ」
「りょーかい、車持ってくンね」
帰宅して一旦脱いだコートを羽織り直し、Aは車のキーを掴んだ。忘れずにケーキ箱をひとつ手に取り、先に外に出る。
茜色の空は、とっくに夜空に変わっていた。
・
「燈矢兄にA兄！？どうしたの急に！連絡あったっけ？」
「や、ちょっと急用」
「姉さん誰だった、ってA兄！…と燈矢兄」
「ひでー挨拶だなァ焦凍」
「…」
「おまえそんなんだからビビられンだよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
