赤髪の氷使い ページ20
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駅前にケーキ屋ができた。
Aも片割れも甘いものが特別好きじゃないけど、ここのところ激務が続いているから糖分補給しなきゃと空っぽの頭を振って、ファンシーな外観の店に吸い込まれるようにして入店する。
赤い羽を持つ同業者からの猛プッシュもあり開設したSNSの更新にも丁度いいし。
片割れと兼用して動かしているヒロスタは、Aたちの更新を今か今かと待ち構えている。
どうでもいいような些細な投稿にも多くの反応を貰えるのだから、まるで自身がアイドルにでもなったかのような気になって、「ちがうなあ」と思ってしまう。
Aと燈矢は、アイドルじゃなくてヒーローだから。
例の同業者の言葉を借りるならば、これは解釈違いというものである。
「いらっし、…っあ、せぇ！？」
出迎えてくれた女店員に軽く会釈をして、Aは首に巻いたマフラーを口元まで引き上げた。店員の上擦った声に周囲の注目が集まり、店内がにわかにザワつく。
帽子、忘れたしなァ。オープンしたての店に来るのは不味かったかとAはマフラーの下で唇を尖らせた。
仕事着を脱げば一般人になれる他職と違い、ヒーローはスーツを纏わずとも、顔が割れていればヒーローである。
構えられたスマホに「撮影NGでよろしく」と先手を打てば、女子高生たちはハッとして謝った。
ぺこぺこと過剰なまでに平謝りする市民に居た堪れなくなって、ついAは「盗撮はヤだけど、ツーショならいいぜ」と人の少ない壁際に手招きする。
きゃあと黄色い悲鳴が上がり、Aは目が合ったシェフにすみませんと両手をあわせた。
・
「すみません、私まで」
「いえ、こちらこそ騒がせてしまってすンません」
「いやいやとんでもない！外のお客様にもお越しいただけましたし、有難い限りです」
急遽開かれた撮影会は大盛況で幕を閉じた。
見事に客寄せパンダとなったAは、自身と燈矢の分のケーキに加え、シェフの好意でさらに3つもつけてもらった。
1度はオマケがオマケじゃないと断ったが、絶対美味しいので食べてくださいと自信満々に言われたら引き下がることなど不可能だ。
それならと受け取り、予定よりも大幅に遅れて店を出る。
午後休をとって早めに退社したはずが、空は茜色に染まっていて、奥の方では夜がそこまで迫ってきているのさえ見えた。
丁寧に詰められた箱を揺らさぬよう、Aは慎重に家路についた。
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緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
