2 ページ13
＊
前略。義弟が反抗期です。
「A兄ちゃんは来ないでくれ」
「おいおい弔、あまり我儘を言うんじゃない。君のためを思って言っているんだ。そうだろう？A」
「待ってよお義父さん…おれはいま可愛い義弟の反抗期に心を痛めているんだ…」
Aには義弟がいる。いや、正確には義弟ができた。
数年前、お義父さんとドクターが拾ってきたのは「崩壊」という何とも扱いにくい個性を持って生まれたせいで家族を壊してしまった子供だった。
シムラテンコと名乗った子供はお義父さんによって死柄木弔と新しい名前をつけられて、Aの弟として暮らしている。
弔とAに年齢差はほとんどないが、1度人生をやり直している分、Aのほうが何年も年上に見えた。
出会った当初は触れたら壊してしまうとAを避けていた弔だったが、「再生」の個性を持つAは殺しても死なないと分かると、姿を見るだけで近寄ってくるほどに懐いた。
Aがデレデレになってしまうのもお分かり頂けたかと思う。ちょっとした癇癪持ちくらい、精神年齢n歳のAには可愛いものだ。
ショックで家族の記憶が朧気なのに精神を安定させるためにその家族の手を全身に身につけるのも、見慣れてしまえばどうってことはない。
Aはかなりズレた感性を持った、寛大な心の持ち主だった。
「いいかい弔。これは君の初めての課外授業だ。大人の目が届かないところに大切な教え子を送り出す僕の気持ちを汲んでくれないか？」
「……でもさあ、………」
これから弔は課外授業に出る。
弔が壊したくて壊したくて堪らない相手を殺すためだ。
いやどんな授業だよ。そう思ってほしい。
おれの周りの人間はその行為に何の疑問も持たないから、おれが間違えているのかと不安になる。
ただ、今回の件についてはAにも思うところがあった。
こっそりとお義父さんに教えてもらったことだが、このたびの対象はお義父さんを傷つけた人物なのだ。否、傷をつけたなんて優しいものではない。生命維持装置を長時間外して行動できない身体になってしまったと言えば、事の大きさが分かるだろうか。
ドクターによる治療を受けたお義父さんを一目見たAは、その怪我の酷さに卒倒してしまったらしい(優しい子供に育ってくれたとお義父さんは嬉しそうだった)。
現在は顔面移植を行い、Aのお義父さんは以前とは違う顔で１日の大半を座って過ごしている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
