食べたい男主 ページ11
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うっとりとした目で己の爛れた腕を見つめる男を、荼毘は煩わしく思って仕方がなかった。
「ねーえ、ちょっとだけ！ほぉんの1口だけでいいからさ」
「キモい近寄ンな変態」
「そこをなんとか！ね、お願い！この通り！」
何が「ね」だ変態野郎。薪にしてやろうか。
離れるために下がるとそれ以上の距離を詰めてくるAに、荼毘はぞわぞわと身体の底から不快感が湧き上がってくるような気がした。
「いーじゃん、ボクたちの仲だろ？」
「例えお友達同士でもテメェの腕食わせるわけねェだろ」
「あんた、ヴィランのくせに案外マトモなこと言うんだね」
ま、それはそれとしてひと齧りだけでいいからさ！と顔の前で両手を合わせるAを荼毘は本気で燃やしてやろうかと立ち上がりかけて、それから元の位置に戻った。
こんなド変態は燃やす価値すらないと思ったし、そもそもコレは炎に包まれても喜びそうだと思ったからだ。
荼毘の炎は崇高なる目的のために灯すもので、ゴミを灰にするために焚くものではない。
やれ放火魔だやれ無差別殺人鬼だの言われる荼毘だが、荼毘にだって選ぶ権利はあるのだ。無茶苦茶を主張している自覚はある。
この稀に見る超弩級の変人と荼毘はそれなりに付き合いのある知人であった。
非常に残念なことに、裏社会で生き始めた荼毘が初めてマトモに会話できた人間だ。"これ"でもまだ会話が成り立っているほうなのだと言うと、こちらの世界の様子が少しは理解できると思う。
「ケチ。2本あるうちの1本の、そのまた一欠片くれたら良いつってんのに。生活に支障はないだろ？」
「そういう問題じゃねンだよ。気色悪ィ。だいたい俺の腕ちぎって何がしたいんだ」
「！……ふふ…うふふ、面白いこと聞くね。食べる他に何があるんだい？」
「理解できねェ」
「いやいや、そんなものしなくていいさ。あんたはただ肉を提供してくれるだけでいいんだよ。焼かなくても最初からレアだなんて有難いねえ……あ、ミディアムレアかな？だいじょうぶ、どっちもボク好みだ」
「何がどうなったらおまえみたいな変態が生まれるんだ。偏食家にもほどがある」
「ええ？ちょっとヤダなあ、照れる」
ベタにも右手の人差し指で頬をかくAはどうやら本気で照れているようだった。荼毘の目が死んでいくことにもAは気づいていない。
彼の目は、荼毘の変色した腕にのみ向けられている。
譲歩に譲歩を重ねていた荼毘は、とうとう考えることを放棄した。
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緑猫(プロフ) - しらないさん» ご返信が大変遅れました…！申し訳ないです！コメントありがとうございます！！思いついたときにこそこそ書き溜めていけたらと考えております＾＾ (2021年12月29日 0時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
しらない - 面白い。好き (2021年12月22日 14時) (レス) @page4 id: ffdbbf39c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年12月16日 21時
