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バスはどんどん進み、やがて高速道路に乗って。
途中、サービスエリアで休憩に入った。
バスを降り、お手洗いを済ませた後、腕時計で時間を確認する。
(出発は……9:30か)
あと30分近くある。
せっかくだし、お土産屋さんを覗きに行こう。
最近のサービスエリアは、お土産屋さんが充実してるところが多いし。
露店を回るのもいいかも。
ご当地B級グルメや、名前も知らない情報雑誌。
よく分からないキャラクターのキーホルダーや、定番のお菓子など。
お土産屋さんには、面白そうなものが沢山売っていた。
お土産屋さんの中をぐるぐると回っていたあるとき、ひとつのワゴンが目に止まった。
茶色くて、ちょっとアンティークな装飾が施されたそのワゴンには、
動物のぬいぐるみや小物など、全体的にもこもことした癒し系グッズが沢山のせられていた。
ワゴンの周りには、ちらほらと動物の置物もある。
(かわいい……!)
周りの人達の目線など一切気にならず、
私は吸い寄せられるまま、うきうき気分でそちらへ歩いて行った。
なんだこの素敵空間。
ぬいぐるみたちがいっぱいに積まれて、みんながみんなこっちを見てる。
かわいすぎる。天国です。
どのぬいぐるみちゃんたちも、すっごくかわいいけど……
私は、さっきから特にずっと目が合っている(気がする)、"その子"を手に取った。
"その子"は、くまの巾着袋だった。
生地は丸ごとくまさんの毛のようにモフモフ、ふわふわした素材。
結び口の下には、目、鼻、口と……顔の刺繍が施されている。
下がり眉で、目がたらんと垂れたおちょぼ口の、ちょっとぶちゃいくなくまさん。
丁寧に作り込まれた愛嬌あるくまさんのお顔に、私はメロメロだった。
(かわいい、かわいすぎる……!)
可愛い。肌触りも最高。しかも巾着袋だから、普段使いもできる。
こんなの買わずにいられようか。
……いや、だが落ち着け私。一応値段は確認しよう。
くまさんのお尻あたりに付いてるタグを、くるっと裏返す。
「…!?」
3000円!?
手乗りサイズでこの値段か。思ってたよりもするな。
いやでも、めちゃくちゃ肌触りいいし、これくらいの値段は妥当か……
「うう……」
払えない値段では全然ないし、すごく可愛いのだけど……ちょっと迷うな。
いやでも、こんな可愛い子、逃すのは惜しい。
どうしようどうしようと、逡巡していたら。
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作者名:mili | 作成日時:2023年1月5日 21時