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(なんだ今のは……)
重岡さんがくれたペットボトルのミルクティーは、ついさっき買ってきたばかりのようでホカホカ。
彼は、私がお礼を告げる間もなく、もう既に違う集団の輪に入って喋ってる。
ハッと我に返って、『神ちゃん』さんのいた方を振り返ったけど。
そこにはもう、彼の姿はなかった。
「……」
『神ちゃん』さんのかっこよさに、ときめいたり。
重岡さんのよく分からない行動に、戸惑ったり。
心臓に悪い何かが、この数秒のうちに沢山起こった。
*
7:15を迎え、学生それぞれがバスのトランクに荷物を詰め込み。
『全音会』冬合宿、ついにスタート。
観光バスにぞろぞろ乗り込んでいく人々。
知り合いも全然いない私は、当然一人で席に座る。
走行中、私は、外の流れゆく景色にただひたすら目をやっていた。
だけどあるとき。
重「はーい、今からマイク回すんで。
全員、一言ずつ自己紹介お願いします。
所属する団体名、学年、名前。
あとはやってる楽器とか役職名とか、適当に教えてくださーい」
バスのスピーカーから、重岡さんの声がして。
バスの真ん中辺りの座席に座る彼が、マイクに声を乗せて喋っているようだった。
今このバスに乗っている合宿参加者たちに、自己紹介をして欲しいとのこと。
重岡さんらしい。合宿を通して、色んな人たちと交流しようとしてる。すごいな。
……ていうか、自己紹介か。上手く話せるかな。
緊張で、少し体がこわばった。
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作者名:mili | 作成日時:2023年1月5日 21時