じんわりと、ゆっくりと。《緑》 (ページ16)

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16*side 緑ページ16

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(森川さんって……)

ああいう、柔らかい笑い方すんねんな。

あんな風に、丸っこくてもふもふしたモンが好きなんやな。

ぼんやりと彼女を見つめてた俺の口元は、気づけば緩んでて。

「可愛いな。そいつ」

口から零した「可愛い」の対象に彼女自身を含ませてることなど、微塵も感じさせないような素振りで。

俺はいつの間にか森川さんの隣まで近づき、話しかけてた。

結構、浮かれた声出してたんとちゃう？

しげなら絶対気づくと思う、俺が浮かれとるって。

その後森川さんは、最初こそもじもじとしてたものの、辛抱強く俺が話しかけていくうちに心を開いてくれたみたいやった。

ていうか……心開いてくれてからの森川さん、さながらワンコみたいやったんよ。

人見知りが激しいだけで、こういう一対一の場面で、相手に気を許すことさえできれば、全然話せる子やんか。

猫みたいな子や、とも思う。

怖がって怯えて隅に縮まってたような子が、手を差し伸べたらあんなにも明るい瞳で見上げてくれるなんて。

俺は、今日この瞬間までちっとも想像できてへんかった。

結局、俺は森川さんにくまの小物をプレゼントとして贈った。

我ながらちょっとおかしいとは思う、初対面の子にいきなり物贈るなんて。

せやけどそうせずにはいられないくらい、俺には彼女がかわいい生き物に見えてしまって。

なんていうんやろ。孫、子供、ペットとかに色んなモン貢ぎたくなるあの感覚。

かわいさあまりに、どうか喜んでくれるようにって、尽くしてしまいたくなるあの感じ。

当然彼女にはめちゃくちゃに遠慮されたけど、最終的には俺がほぼ強引に押し付けた。

どうか受け取って欲しい、俺の気持ちや、って。

ほんでその後、しげに介入されて彼女との時間は一度終了したけど。

もっともっと、森川さんと話してみたいと思った。

この合宿の期間で、あともう少しだけ彼女と交流を深められたらと思った。

それぐらいに俺は今、森川さんのことに興味があった。