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最悪、絆創膏は普段から鞄の中に携帯しているし、保健室で手当てしてもらえなくても問題は無いのだが。勝手に保健室で時間を潰していて後から怒られないかだけが心配である。



『………ま、いいか』



正直、肩書きこそ中学生だが前世の記憶もある故に行き過ぎた精神年齢のおかげで、今世は無駄にメンタルばかりは強い。叱られたところで微塵もショックは無いので好きにさせてもらおう。

他に誰も使っていない様なら奥のベッドに寝転がってみようかと、保健室の中を珍しく思いながら一つ一つのベッドがカーテンに仕切られた薄暗い奥へと真っ直ぐに向かう。けれども、目の前のカーテンに手をかけようとした丁度に、カーテンが大きく揺れるものだから、思わず『わ……』と半端な驚きの声と共にその場に立ち止まる。



「やっ、」



恐らく布団だろう、布の擦れるゴワゴワとした音と共に薄い布越しに微かではあるが確かに聞こえたのはシャープな印象の高い少年の声で。次の瞬間、ガシャンとけたたましく響いた衝撃音に掻き消されてしまったが、その声は耳によく残っていた。

床に一回バウンドし、表面を擦り付けながら見事に私の足元まで転がってきたスマホよりも一回り厚くて大きな黒い電子機器を取り敢えず拾ってみれば、目を凝らせば薄々見えるカーテンの奥の丸まった影が息を呑む声が聞こえる。静か過ぎて分からなかったが、間違い無く誰かが居る。



『……ねぇ、これ』
「お、置いておいて……気にしないで、おれの事。邪魔、しないから」
『えっと………』



左側に十字キー、右側にはアルファベットの割り当てられた丸いボタンが着いた黒い直方体。どう見たってゲーム機だろうそれに特にどうこう言うつもりは無いけれども。取り敢えず返すべきかと、カーテンの向こう側の彼へと話しかけるが帰ってきたのは聞いて怯えが感じ取れる震えた声での拒絶であった。

ここまで拒絶されたのは初めてで戸惑いながらも、そこまで人間力が無い訳でも無いのでその場にしゃがんでカーテンの下から手を突っ込むとゲーム機を差し出す。



「………」
『大丈夫、見ないから』



本当は見たいけれど、とは思うが流石に我慢しなければならないところは弁えている。布団を被っているのかブカブカとしたフォルムだが、角度によってはその華奢さが丸見えの影に向かって優しく声をかけてみれば、躊躇した様子を見せた後に彼はおずおずとゲーム機へと手を伸ばした。

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. - 好き好き大好き💕💗💕 (5月2日 17時) (レス) @page27 id: 53450eb49b (このIDを非表示/違反報告)
たてつ(プロフ) - 美醜逆転好きです、読めて嬉しいです。更新頑張ってください😭💗 (4月21日 9時) (レス) @page22 id: 6e18942472 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 大好きです (4月7日 23時) (レス) @page7 id: 9bd3f7b3ee (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - 今まで美醜逆転パロはピンときていなかったのですが、この作品で大好きになりました。美しい文章と人物の解像度の高さでとても楽しく読ませて頂いております。この作品が大好きです、どうかこれからも頑張ってください! (4月7日 22時) (レス) @page12 id: 108058d072 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おじ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2024年4月5日 19時

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