47話 ページ6
「はい。Aのマグネット」
「あ、りがとう」
三浦くんはいつものように笑いながら私のマグネットを取ってくれる。あれ、待って。あれ？気のせい？今、と気づいてしまうと心臓がばくばくうるさくなる。落ち着け、顔に出すなと自分に言い聞かせる。
「Aもめっちゃ歌とダンスしてもバテんくなったね」
やっぱり聞き間違いじゃない。と思いながら、一瞬間を開けて頷く。
「ほんと？結構ジムで基礎体力あげるの頑張ってた」
「まじか〜！俺も負けんようにせんと。でもやっぱ、」
一呼吸置いて三浦くんは、悪戯っぽく笑って私を見る。
「俺、Aの歌声好き」
ねぇその笑顔、呼び方。私いま何を試されてるのと聞いてしまいたくなる。稽古場の喧騒の隅では三浦くんが私に言った言葉は誰にも聞こえない。仕事、仕事と念じて、でも言われた事には素直に返したくて、精一杯にこやかに笑う。
「ありがと、嬉しい」
「…あー、うん」
何かまずい返しだっただろうか。やっぱ照れが隠しきれてなかったかなと思っていると、三浦くんがパーカーの袖で口元を隠して目を逸らした。自分で褒めてくれたのにそんな恥ずかしそうにしないで、と心の中で突っ込みつつ私も堪らずつられて照れた。暫く無言でいると三浦くんと私の肩をぽんと高野くんが叩いた。
「ほら。このあとブロックで前半の通し。2人とも花笠持って」
「すごい...膝丸がお兄ちゃんだ……」
「末っ子のくせに…」
「いや誰がお兄ちゃんだし。あと宏規、リアルでは俺のが年上だから」
呆れた顔をした高野くんを見て笑みが溢れる。稽古中、普通に接してくれるのは有り難いなぁと思いながら花笠を受け取る。三浦くんが茅野さんに呼ばれて駆け出す。高野くんが私の横に立った。
「先越されちゃったな、宏規に」
「え、」
「先にAのこと褒めたかったのに。まじで今回凄いよ。負けないように頑張るわ」
「……うん。私も負けない」
いつ返事の事を言おうか迷うと、先に高野くんが「わかってるから」と言って笑った。
「今はとにかく必ず成功させよう。3人で、皆で」
「うん。絶対に成功させる」
1人では心細い事もこの兄弟達となら大丈夫。それからブロック稽古に私達は参加した。
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emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
