81話 ページ48
「お疲れ様」
「宏規くん！観に来てくれてありがとう」
公演が終わってシャワーを浴びて髪を乾かした後。お客さんだよと声を掛けられて楽屋を出ると、其処には宏規くんが立っていた。
近づいてくと笑って、髪の毛を指さされる。
「もっと髪乾かさんと風邪引くよ」
「え、結構乾かしたんだけどな……なんか改まってお芝居観られるの初めてだね」
「いやいや俺もそうやったし。なんなら初日よりAに観られる日のが緊張したわ」
そう言って笑う宏規くんが楽しそうでつられて笑っていると「やー」と宏規くんが言葉を続ける。
「正直思った以上に面白かった。レミゼみたいな重い世界観演じてる反動もあるかもだけど、凄い元気出たわ」
「確かにレミゼ観た後は結構私ヘコむもんなぁ」
「あんなに朗読で苦戦してたのが嘘みたいに恋愛モノ上達したAにもびっくり。全然台詞読んでる感じも嘘っぽくもなくて普通にビリーに嫉妬した」
でも現実の俺やったらあんな清楚なお嬢様とは一緒になれんな〜なんて軽く言う宏規くんに、また私は笑った。
「私も宏規くんが清楚なお嬢様好きだったらちょっと困る」
「Aは結構そっち寄りと思うけどなぁ」
「清楚なお嬢様はパルクールしたりお芝居でも刀を振り回しません」
「ははっ。確かに。Aの殺陣ばちばちやもんな」
「ふふ。…でも嘘っぽくも台詞読んでない感じに出来たのも、宏規くんのおかげだよ」
そう言うと、宏規くんは「俺？」と驚いた顔をする。自分の影響だってちっとも思わないんだろうなぁ。私はこんなに影響されてるのに、と内心思う。
「朗読練習した時も上手くやんなきゃって思うとそれが出る。相手を見て、相手の言葉を聞いてって教えてくれたのは宏規くんだし」
「だし？」
「……色々と影響を受けてるんです。尊敬する"お兄さん"に！」
「あははっ、久々聞いたーお兄さん呼び。ま、夏はまた良いお兄ちゃんになるから任せといて」
こと恋愛モノのお芝居においては。人を好きになるという気持ちについては、宏規くんに本当に色んなものを与えて貰った。好きっていう嬉しさ、声を聴けた時の喜び、会えない時の寂しさ。その他、諸々。
「あのさ、俺はAが俺の後ろにいるなんて思ってないよ」
「え？」
「他人の背中だけ見てるようなその程度の役者じゃないって思ってる。今日芝居観て確信した。だから…参騎は真正面から"俺"を見て」
「っ、」
それは恋人ではなく役者の彼としての宣戦布告。
参騎稽古開始まで、あと僅か。
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emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
