80話-Side Hiroki- ページ47
「ほんと凄いよね」なんて言われる事がよくある。例えばバレエ。でもそれは自分にとって出来て当たり前の事で、褒められてもいまいちピンと来ない。これは間違いなく通用する武器だった。でも役者になる、この武器を活かす上で致命的な欠陥が俺にとっては歌だった。
(今でも"あの人"に溜息吐かれた事思い出すと結構来るもんなー)
褒められるよりは窘められたい。わりと調子に乗る方だって、自分の性格をわかってるから。けど、自分の事みたいにはしゃぐAの言葉は、やっぱり凄く刺さるし自信になった。そういえば同じ物作る時に「意見」は言うけど、Aは「ダメ出し」ってしないなーと今更気づく。
上手く言えんけど、相手に対して出来てないっていう言い方より「こういう風になるのがもっと見たい」みたいに言う。芝居においては、Aは自分のやりたい事以上に相手に合わせて自然な流れを作るのが好きなのかもしれない。
(Aは俺の事羨ましいとか、背中見てるって言ってたけど)
そんな事を考えながら今Aがホープ役として舞台に立つエニゴを客席で観てる。女優帽が似合ってて、ダンスもロングスカートのワンピースがふわりと広がる形まで綺麗なターン、手の指先から足の爪先、視線の動き方も全て優雅で、恋を自覚すると年相応の可愛らしさが覗くご令嬢に皆も釘づけだった。
「僕と一緒になってくれるかい」
政略結婚する相手とは違う、ただ客船に居合わせた主人公とホープは結ばれる。レミゼとは全く違う展開。鼻先が触れ合う距離で主人公を見つめて、ホープは嬉しそうにはにかんで頷く。
(あ。今の間の取り方、仕草、めっちゃ好き)
Aはダンスも歌も一定以上のクオリティだけど、同年代と差をつけるのはそういうちょっとした表現力だと思う。当たり前な話なんだけど台詞を「読んでない」。「嘘じゃない」って思う、そういう空気みたいなものを作るのが凄く上手い。
刀ミュの時も俺が袖にいて、モニター越しでAを見る時。好きとか関係無しに、この子と掛け合う相手役が羨ましいと思う。絶対に楽しく芝居出来る。見つめられるとその空気に飲まれる。
(なんで俺の背中見とるんかわからんわ。全然、そんなことないのに)
豪華客船のドタバタな旅が終わって幕が下りる。陽気なジャズナンバーが流れる中でAや共演者はにこやかに客席に笑って一礼した。
もうすぐ参騎。早く成長した女優のAと芝居がしたい。今は純粋にそう思った。
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emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
