78話 ページ44
帝劇までの道のりは私にとって特別で、あの赤い座席と客席の空気を吸うだけで胸いっぱいになる。
私がコメディをこの板の上で演じて、彼はフランスの大河的な悲劇を演じるというギャップを感じつつ、私は座席に座った。
(あ、出てきた)
幕が上がって彼が出てくる。私はエポニーヌが好きなわけだけど、彼女と宏規くん演じるマリウスの絡みは結構少ない。劇中ではアンサンブルもこなす彼が、エポニーヌが捕えられるシーンで捕える役に回っているのも、レミゼの登場人物を愛するコアなファンとしては美味しい所かもしれない。
一時期宏規くんが私に垣間見せた不安なんてまるでないかのように、彼は伸び伸びと歌って、いつものようにバレエ仕込みの指先まで洗練された動きで役を演じきった。
ニ幕すぐの大好きなエポニーヌの「On my own」を聞いてしまうとやっぱり涙するし、「恵みの雨」も凄く良い。だけど目いっぱい恋するコゼットも可愛いなぁって目移りするし、脇を固めるキャラクター達も文句なく素敵だ。
(やっぱり、まだまだ遠い人だなぁ)
カーテンコールも仲間から茶々を入れられながらにこやかに話をする様が印象的で。私が苦戦した恋愛要素も難なくこなして、舞台で堂々としている姿は私には遠く、それでいて大きく映った。
役者としては嫉妬してしまうし、自分の至らない所と比べてしまうと落ち込む。それでも秋までマリウスとして生きる宏規くんに心の底から、惜しみない拍手を送った。
*
思えば宏規くんの舞台を観るのは予定が合わなくて初めてだし、楽屋に挨拶に行くのも初めて。今更そんな事に気づいて妙に緊張してしまう。レミゼでお馴染みのコゼットの挿絵がプリントされた暖簾が掛けられた楽屋。案内された時には既に観劇していた同業者や知人の人が衣装も化粧も取り払ったキャスト達と談笑していた。少し波が引くのを待とうかなと思っていると、曲がり角から急いで出てきた女性とぶつかりそうになる。
「わっ！ごめんなさい！！怪我しませんでした？」
「いえ！あ、コゼット役の」
「はい！生田です」
凄くミーハーな感想だけど、さすがアイドル。笑顔が眩しい。顔も小さい。ビジュアルを見てるだけで目の保養で、納得のコゼットなんて思いつつ、観劇後の感情そのままに感想を伝える。
「本当に華やかで素敵なコゼットでした」
「わ！嬉しい。ありがとうございます！…あの、もしかしてAさんですか？」
「え」
何で私の事を知ってるんだろう？と私は首を傾げた。
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emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
