72話 ページ35
2019年春。春からは怒涛のスケジュールで舞台や映像作品に出演する。
20歳になる年。挑戦の年だ。
「その挑戦の年に、これがスタートなんて最高じゃん？」
真っ白なロングワンピースに女優帽。ハイヒールの爪先を2度こつんこつんと鳴らす。
戸崎さんは興奮気味に帝劇の楽屋でエニシングゴーズ初日を祝福してくれた。
1度は諦めかけた歌と芝居の道。発声を禁じてダンスを中心に活動した時期も今となっては糧になってる。
全部戸崎さんが私を諦めないでくれたおかげ。彼女はもう私の第2のお母さんだ。
「めちゃくちゃ素敵なお嬢様演じてみせるから、観てて！」
「いいね！強気で行けいけ！！あ、そうそう。楽屋花撮らなくていいの？」
「あ！撮る撮る。ファンの子のSNSに載せたい」
帝劇は花を贈れる時とそうでない時があるけど、エニゴはスタンドでなければ問題ない。
相変わらず優しいファンの人達や律儀な仕事関係の人が花を贈ってくれている。
「あ、井阪くん！マメな人だなぁ」
花ではないけどLINEをくれた人達もたくさんいた。高野くんや麻璃央くんも日付変更と一緒に送ってくれた人達の1人だ。
「わっ。おっきい胡蝶蘭。初めて貰ったか、も」
井阪くんの可愛らしいアレンジメント花を見た後で白とピンクの胡蝶蘭が目に入った。
『祝ご出演 A様 三浦宏規より』
「……っ」
デートの日の何気ない会話を思い出す。そしていつかのお返しの事も。
『そういやエニゴのホープってイメージカラー何？』
『え、急だね！？白かなぁ』
白だ。彼も好きな色のうちの1つ。ピンクは鈴鳴カラーだから？女性っぽいから？
ともあれまた驚かされちゃったなと頬が緩む。そんな時、スタッフさんが声をかけて来た。
「あ、胡蝶蘭！定番だけど華やかでいいですよね〜」
「うわっ！？あ、そ、そうですよね。匂いもしないから好かれるって」
「そうそう。あと花言葉がとびきりなんですよね」
「花言葉？」
あまり花言葉に詳しくないので首を傾げると、スタッフさんは笑った。
「幸福が飛んでくる、ですよ。縁起の良い花言葉です」
「へぇ！それもあって贈る花に重宝されるのかぁ。勉強になりました」
「色別にも違いますよね。例えばピンクなんかはまた違いますよ」
「え、そうなんですか？」
「あなたを愛しますですよ。ふふ、熱心なファンの方なんですねぇ」
スタッフさんは差出人を見てない。彼を知らないかもしれない。
本番前のとんだ爆弾に私は叫ばないよう口を抑えるしかできなかった。
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emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
