67話 ページ30
宏規くんとのデートの前日に髪を切った。インナーカラーを入れて少し髪が動くとちらりと明るい色が覗いて気分が上がる。
季節ものの新色のアイシャドウやリップで肌に色を乗せて、ちょっと頑張りすぎかなぁ？と思いながらも新しい服をおろしてシューズボックスを覗く。
(足が擦り傷だらけでみっともないんだよなぁ。靴擦れも怖いし履き慣れたのにしよう)
それにしても靴も新しいのが欲しい。意外と人は足元まで見るものだから、くたびれた靴を履かないように――とは麻ちゃんからの受け売りだ。
「これなら黒だし合わせるのも無難かな」
履き慣れたレースアップのブーティを履いて、とんとんと爪先で床を二度鳴らす。
会うのは久しぶりな気がする。気付けば私は頬を緩めてスマホをぎゅっと握りしめた。
*
肌寒い季節。待ち合わせ場所に着いて、ぼんやりと腕時計を眺めた。
すると後ろから声がかかる。
「そこの子、短い髪めっちゃかわええなぁ」
「！」
柔らかい声に関西弁ともまたちょっと違う独特な訛り。ぽんと背中を叩かれて振り返ると、満面の笑みで立っているその人が見えた。
「俺とデートしよ？」
「ふふ、ナンパは間に合ってます」
「なんやー。もうちょいリアクションしてくれると思ったー！」
へらりと悪戯っぽく笑って後ろから出てきたのは黒いコートを羽織った宏規くんだった。髪の毛もすっかり黒くて、マリウス仕様に仕上がってるなぁと笑みが零れる。
「だって口調がまんま宏規くんだし、ちょっと言い方わざとらしかったもん。お芝居の時の方が上手だよ」
「いや役者にその言い草傷つくー」
「あはは。ナンパ慣れしてる方が傷つきますー」
でもナンパしなくても女の子には困らないだろうしなぁ、と思っていると宏規くんはきょとんとした顔をする。
「髪、ちょっと前からだったけどすっかり真っ黒が様になってきたね」
「ファンの子からいっつも明るいから変な感じするとか言われたー。あとやっぱ散々色抜いてるからまぁ傷むし色まだらになるよね」
「そうかな？黒髪好きだよ。なんかより育ちの良い人っぽいというか……」
元々小さい頃から好きな音楽とか特技、身に着けてるものも含めて、彼は育ちが良い。本人はそういうのを気にしないらしく「そー？」と首を傾げた。
「あんま立ってると寒いしどっか入ろ」
「うん」
自然と手を繋ぐ。歩き出すとやっぱり擦り傷だらけの足がちょっと痛んだけど気付かないふりをした。
一緒にいられるこの時間が、何より嬉しい。
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emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
