61話 ページ23
三浦くんと晴れて付き合う事になった。なったはいいけど、今度は別の問題があった。
「付き合うって、何すればいいんだろう」
「高校の時1回付き合った時あったよね？てか今時そんなん小学生でも言わないぞ？」
「いやわかるけど！え？三浦くんと例えば手繋いだり、キ、キ、」
「もっかい言おう。今時小学生でもそんなので動揺しないし、役で俳優とキスとか今後有り得るんだからもっと耐性つけな」
シビア過ぎる麻ちゃんと通話を繋げながらテーブルに突っ伏す。この事を知っているのは現状、私の周りでは麻ちゃんだけ。引き続き麻ちゃんだけが頼りなわけだけど、彼女は笑うばかりで楽しんでいる様子だった。
「ていうか手も繋いだしデートもした事あるんでしょ？別に今までどおりでいいんじゃない？で、後は流れに身を任せなよ。人に迷惑かけない程度に楽しみな〜今が1番楽しい時期よ！でも片想いの時期のが楽しいと思うけどね！！」
「人を使って楽しむのやめてくれる…！？」
「いやでもこれはAの人生経験にも必要だし、役者として肥やしになると思うなぁ。ラブコメとはいえ次回作のミュージカルは恋する令嬢の役でしょ？」
どうしてそうも冷静に分析できるのか、と思いながら「うん…」と頷く。でも麻ちゃんの言う通り、経験は芝居に「説得力」や「リアルさ」を肉付けするエッセンスに成り得る。人のお芝居を見ていても上手く言えないけどふとした仕草なんかに「多分現実でもこうするんだろうな」と思わせる何かを感じる事は結構ある。とはいえ、そういう技術を得たいから三浦くんと付き合うのでは決してない。
(なんか意識すると余計恥ずかしくなって連絡も取りづらくなっちゃったし……)
今までどんな風に話してたっけ？と思ってしまう程、意識しすぎて恥ずかしい。年は明けて2019年。一緒にする仕事は、この夏は参騎とそれに絡む取材だけ。今までみたいに長く当たり前に一緒にいる時間は、今年はきっとない。高校の時に付き合った――とは名ばかりの人には楽しくないと言われて別れられた苦い記憶を思い出す。さすがにもう二の舞はごめんだ。
ふとスマホから音が鳴って液晶を見る。LINEの通知で三浦くんの名前があって、びくりと肩が跳ねる。
「み、三浦くんからLINEが来た」
「お！なんてなんて？」
「えーと、変なのセットでついてくるんやけどご飯行かない？だって」
「変なの？」
「井阪郁巳って言うんやけど…って。井阪、井阪さん！？」
予期せぬ名前に私は思わず叫んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 207人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
