59話-Side Hiroki- ページ21
「もうすぐ2019年になるやん」
紅白を終えてカウントダウンの番組に出たら、2019年はすぐそこだ。乱舞祭を終えて怒涛のスケジュール。レミゼも絶賛稽古中で充実した日々と言えばそうなんやけど、気もそぞろだった。
「ほら。しゃんとしろよ」
「洸が年上っぽい事言っとる…」
「だから俺年上やし！」
楽屋で爽やかに笑う洸に、世の女子はこの笑顔が好きなんやろなぁとぼんやり思う。あの子からの返事は無い。会えばいつもどおりにはにかまれ、仕事の時は別人のようになるその切り替えに舌を巻く。このままはぐらかされるってのも、まぁ無くは無いかもしれないと思いかけていた矢先。スマホが震える。
『今日の夜、時間ありますか？』
口元を手で抑えてLINEのトークを凝視する。仕事にきちんと集中せなと思っても、心の片隅にどうしても「このあと」がちらつきながら、俺は今年最後の髭切役を全うした。待ち合わせの場所は、バレンタインの時に会った場所と一緒だった。前と違って、Aのほうが俺より先に待っていた。
「三浦くん」
「ごめん。待った？って、普通逆やね」
「たまには私がちゃんと先についてなくちゃと思って。お疲れ様。年末は怒涛だったね」
「ほんまやね。もう最近家帰ったら秒で寝るもん」
そう言うとAは楽しそうに笑う。年末はわりと仕事でずっと一緒におったから気付かなかったけど、ちょっと痩せた気がする。元々細いのにとか、こんなスケジュールじゃそりゃそうか、とか。色んな事を考えながらも、今日呼び出された理由を、結果を知りたくて気が気じゃなかった。
「あの、ね。ずっと待たせてた返事をしようと思って」
「……うん」
ああ、またデジャブ。チョコを渡す時も、見てるこっちがかわいそうになるくらい緊張してたっけ。緊張がうつって、こっちまで緊張するのも一緒。いくみんに「張り切って行って来い」なんてLINE貰ったけど、いざとなるとどうしようもなく緊張する。腹の奥がぎゅっと掴まれてるみたいだ。レミゼの稽古でオケと歌を合わせた時もこんなやったな、とぼんやり思う。
「正直すごく返事をする事も、そもそも自分の気持ちを言う事もずっと悩んでて」
「うん」
「告白してもらう前からね、ずっと悩んでた」
「……う、ん？」
俺が告白するより前から？と、純粋に疑問に思う。Aはまっすぐに俺を見た。
「私も、三浦くんの事が好き」
その言葉に、人生でどんな台詞や音楽や踊りを見た時より上の衝撃を受けたのを今でも覚えてる。
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emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
