56話-Side Hiroki- ページ18
「なんか、変わらんよなぁ俺ら」
「いや、変わってギスギスしたってしょうがないし」
乱舞祭が始まるより前、洸とそんな話をした。同じ子を好きになって別に気まずくなるわけでもなく、いつもどおりだった。洸が変に落ち着いていたせいもある。その時の洸は「俺さ」と話を続ける。
「宏規が根拠のない自信だけはあるって言うの、何となく分かる」
洸は言葉にしないだけで蓋を開いて見ると野心や情熱が無いわけじゃない。心を開いた人間や好きな物に対してはより饒舌になるし、熱意も人の倍になると勝手に思ってる。
「グループでやってて気づいたら大きい事になって。何となくこうなりたいなぁ、が叶ってきて。強運てのもあるかもやけど」
「でも運も実力のうちやん。努力した分絶対報われるなんて、そんなん漫画の中だけやし」
「はは。宏規のそういう所すげぇ有難い」
俳優を視野に入れた時もわりとすんなり役を貰えたとも洸は話した。
「でもその自信に流され続けてきたかなとも思ってて」
「？」
「流れに身を任せ過ぎて俺は宏規よりAに対して奥手過ぎたなぁって」
「ぶっ！！」
水を飲みながら洸の話を聞いてたら、突然淡々とした調子でぶっこまれて思わず咽る。その時の洸はいつもみたいに笑ってた。
「だから思いきりやるって決めたから」
「……それは俺もおんなじ。やるからには本気でやる」
洸の揺るぎない決意の結晶を乱舞祭の前楽で見た気がした。袖で2人の踊りを見て、嫌というほど思い知らされる。今度は俺の番だ。
「A！」
「う、わっ！？あ、ああ三浦くんか。びっくりした。次は千秋楽だね」
廊下での洸とAの会話を盗み聞いてしまった。後ろめたさをごまかしてAに話しかけると、Aはふわりと笑う。
「あの…やっぱり最後は髭切となの？」
「え〜？何が〜？」
「こ、此処ではぐらかされるのかぁ…！」
「――じゃあ」
はぐらかすと明らかに困った様子のAが可愛い。本当に素の時は芝居が出来ないんやなぁ、と思う。そこがAのいいとこなんやけど。
「今度は俺と一緒に踊って、A」
ぐっと額を寄せる。ああ、駄目だ。答え合わせはまだなのに。夏バテの時と同じ、意地悪をしている。でもAは、俺から目を離さずにはにかんだ。
「…勿論。舞台で望まれるなら、喜んで」
ああ笑い方はAなのに言い方は「鈴鳴」だ。何処でそんなずるいの覚えたん？と思ったけど、それがあんまり綺麗で惚れた弱みだなぁとつくづく実感した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 207人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
