54話 ページ15
東西祭り対決が始まって、巴里公演の楽曲に源氏が混ざり、面白い組み合わせのカバー曲なども披露される中。一度暗転して、ステージが淡いピンク色で照らされる。観客の主達もペンライトを同じ色にする。
前楽は弁慶、大楽は義経パターンだと茅野さんが言っていた。珍しい。ペアを組む相手の念押しなんか今までなかったのに。ヒールを鳴らしステージ中央に立つ。曲が始まるまでの一瞬の間。ステージ近くの主が「鈴鳴！」「可愛い」とひそやかながら声を漏らした。
「さて、今日のお相手はどなたかしら？」と声には出さないけど、仕草と表情で自分の目を手で覆う。しげ美さんだと気合を入れていると、観客席から予想だにしない割れんばかりの歓声が起きる。
『きゃああああああ！！』
『嘘、嘘嘘待って！無理無理！！』
(え、いつもと反応が違う……)
どういうこと？と両手を外して振り返って、私は目を見開く。少し離れた場所から小走りで此方に近づいてくる2部衣装の膝丸がいた。
「なん、で？」
まだマイクオフになっているのを良い事に小声でそう言えば、「膝丸」としての表情を崩さない高野くんがぴたりと立ち止まって、優雅な所作で膝をついて私に手を差し伸べた。
「姉者。どうかこの俺と一曲踊ってくれないか」
「踊れるの？」
そう問いながらも私はこれまでの違和感に全て合点がいった。時折2人がいない事。荒木さんが言った「大阪」という言葉。歴史上の人物達の相手役は大阪までということだったんだ。そして何より高野くんが言った言葉。
『この乱舞祭、Aにあっと言わせるから』
茅野さんも含め、とんでもない物を仕掛けてくれた――と思わず笑ってしまった。曲が始まる。私はスカートの裾を掴んで深くお辞儀をした。
「もちろん。喜んで」
弁慶パートと念押しをされたという事は、膝丸がその通りに踊るということ。ぶっつけ本番なのに膝丸とのダンスは上手く決まった。間奏中の2人のペアダンスでは腰を捉えられたかと思うと、ぐっと上に抱き上げられくるりくるりと高く上げられたまま回る。気恥ずかしくも、かちりとハマるダンスが心地いい。1曲終わった後、拍手が鳴り響いて「膝丸」「鈴鳴」と呼ばれて一緒に微笑んで礼をする。帰り際、すっと肘を出されたので甘んじて弟のエスコートで退場した。
「驚いた？」
「とっても！まさかだった」
膝丸の姿をした高野くんがくしゃりと笑った。前楽は膝丸。ということは大楽は――？答えは自然と頭の中にあった。
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emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
