50話 ページ11
三浦くんとの帰り道は、此処からすぐ近くの駅までだ。仕事帰りの大人が行き交う中で、三浦くんが私の方を見る。
「本当はさ、乱舞祭が終わってからにしようと思ってたんよ」
「？」
「Aに告るの。あんま仕事と並行してあれこれ器用に出来るタイプやないし。でも、日が経つにつれて我慢できんくなって」
「……こっ、」
聞き間違いだろうか。でも、それにしては三浦くんの表情は真剣すぎた。
「俺にしてはね、この1年めっちゃ頑張ったんよ。めっちゃいい子のフリした」
「……」
「すげぇ我慢もした。今もしてる方。でも参騎決まってまたそれが終わってから、次はこれ、次はって先延ばしになったら？そしたらもう待てないってなった」
元々欲しいものは我慢しない方だしと付け足しながら、三浦くんは私の手を引いた。
「Aが好き」
「三浦く、」
「俺と違って気使えるところも、怪我して弱っても諦めんとこも、緊張すると手冷たくなってわかりやすいとこも、全部」
別に特別な出来事があって好きになったわけじゃない。仕事をして会話する延長線で好きになった。自然に好きになったと三浦くんは照れたように笑った。
「この1年、こんな周りくどいやり方したのAが初めて」
「…っ」
「これ以上待てない、知らないふりも出来ない。だから、白黒はっきりしよう」
勿論乱舞祭終わるまでは待つけど、と彼は言う。本番が始まれば1番優先するのはそっち。彼もそのスタンスには同意してくれるようだった。私の手に触れる三浦くんの手に力が篭る。私は、はっと息を吐き出してからゆっくりと彼を見つめた。
「わかった、約束する。乱舞祭が終わったら、必ずお返事する」
「ん、待っとる。それまでは、Aと鈴鳴の兄者しっかりするから！」
「ふふ」
「笑うなや〜」
さっきまでの緊張した空気とは打って変わって、ちょっと茶化すような感じで三浦くんが笑いながら雰囲気を変えてくれる。
三浦くんの手を両手で包んでゆっくりと離した。待たせず返事ができるのが、きっとベストだ。高野くんにも三浦くんにも。ごめん、と心の中で謝りながらそのかわりに、しっかり彼を見つめた。
「私もしっかり髭切の妹と、膝丸の姉者になる」
「いい表情！絶対負けんから」
「うん。2人を食うくらいお芝居も踊りも歌も頑張るね」
「おお、こわ」
兄者の台詞を借りて笑う三浦くんと一緒に歩き出す。冬の熱くて短いお祭りが始まろうとしている。
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emer(プロフ) - ジゼルさん» ご感想ありがとうございます！とても嬉しいです〜！初小説で拙いですがご感想励みに頑張ります…！ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ジゼル - 凄く面白いです！！！夢中で読んでしまいました(*´ω｀*)ご無理せず更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 1時) (レス) id: a4f4dbe6ea (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» いつもありがとうございます。続編も程々に頑張ります！ (2019年11月3日 20時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：emer | 作成日時：2019年10月31日 23時
