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翔side
午前の診察の最後に初診の患者さん。
でも、患者さん本人はいなくて『相談したいことがある』と
問診票に記入されている。
診察室へお呼びすると、落ち着いた感じのご夫婦が入ってこられた。
「お待たせしました、このクリニックの医師をしております」と
あいさつした。
智「えっ？翔ちゃん？」
突然言われてびっくり、先輩の智くんだった。
桜「あなた、お知り合い？」
智「うん、仲良くしていた後輩くん。しばらく連絡できてなかったん
だけどね、お医者さんになったんだね」
「そうそう、久しぶりだね、ステキな奥様だね」
智「ありがとう、翔ちゃんならお願いできるかな・・・」
「うん？相談って書いてくれているけど、潤くん本人はいないよね？」
桜「そうなんです、主人のお知り合いだと知らなくて、
息子の潤のことでご相談があってお伺いしました」
「潤くんのことでどのようなことでしょうか？」
桜「小さく産まれて心身ともに障がいがあるんです、
中学生になったんですけど、健常の子に比べたら
かなりのんびりで。
あ、すみません、これ紹介状なんですけど・・・」
「拝見させていただきますね」
少し時間をもらって目を通す。
「読ませていただきました、３人でがんばってこられたんですね」
潤くんの状態が書かれている。
智「無我夢中でやってきた感じかな」
「引越しで転医希望ってことで合ってる？」
桜「・・・はい、引越しは合ってるんですけど・・・」
看護師さんが雰囲気を察して席を外してくれた。
智「小さく産まれて障がいもあって、ずっと同じ
先生にお世話になっていたの、
体調も崩すことが多いから、もうずっと通ってる感じでね」
「なるほど」
智「もちろん、潤の特性もあることは理解しているんだけど、
全く先生に慣れることなくてね、
普通の診察すら大泣き、大暴れでまともにできたことなくて。
どうしても必要な検査や処置になると、みんなで抑え
つける感じになってね」
「ご両親としてはつらいよね」
お母さんの目にうっすら涙が浮かんでいる。
智「そう、それでも潤のためって。ずっと通ってたんだけどね、
この前、先生に「甘やかしすぎじゃないですか？
少しは慣れてもらいたいですね」って言われてね」
「うん、その日、潤くん体調悪かったの？」
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作者名：ばるこひめ | 作成日時：2021年6月15日 6時
