続〜ゲームギュとの恋〜16

391.嘘つき ページ16

ディスプレーに表示されたイニシャルが
私の身体を じわじわと冷やしていくような気分

出なきゃ、ダメ？

だけど、もしかしたら
キュヒョンに何か あったのかもしれない

無意識に視線をやった
反対側の道路には

濃紺の、車

私は 少し息を吸い込んだ後
意を決して 電話を取った。

「・・はい。もしもし」
SM「Aちゃん。今、こっち見たでしょ？」
「・・、うん」
SM「ひょっとしたら、って 思ったの？」
「・・うん」
SM「・・久しぶりだね」
「うん、・・久しぶり」
SM「これから、時間ある？」
「・・ぇ、」
SM「少しでいいんだ」

いつかも一度 聞いたことのある
彼にしては珍しい、強い言い回し。

きっと。
大切な話。

逃げちゃ、いけない。

「・・、うん。いいよ」
SM「良かった。じゃ、そっち回すね」

切れた電話を 耳から外して
下げていた視線を 上げた。

ヘッドライトがパッと点くと
車が過ぎ去るのを待って
こちらへとUターンしてくる。

SM「乗って？」

少し開いたドアと
優しい声色。

「お邪魔します」
SM「どうぞ。お仕事、お疲れさま」
「あ、・・ありがと。・・・今日は
・・・ソンミン君、は・・お休み？」

本当に
久しぶりに

口にした その名前に
一気に喉が 渇いてゆく。

初めて彼に会った時に 感じたものとも
また違う、

緊張感

「どこ・・行くの？」
SM「ご飯、食べようか」
「・・・じゃぁ。連絡していいかな。
・・・ソンミン君、と食事すること」
SM「・・・どうぞ」

誰に、と 聞かれないのは
それが誰か、分かっているからなんだろう。

リダイヤルからかけた電話は取ってもらえなくて
取らない、って分かったのに、もう一度かけて

結局、メールの画面を開けば

SM「今ちょうど、公演時間だよ」

そう言って、笑った気がした。

「・・そっか。そんな時間か」
SM「聞いてないの？」
「忙しくて、・・・昨日は話せなかったから」
SM「そうなんだ」

嘘つき。

忙しさに 感けて
ずっと 電話なんてしていないのに。

私は この嘘で
何から 自分自身を守ろうとしてるんだろう？

送信ボタンをタップしてから
上げた視線の先には

いつも通りのキラキラした街並みが
静かに流れているけれど

チラリ、と 盗み見た彼の表情が
いつもと違うように 見えていた。

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