灰ゾーン・エージェンシー / 架空の第○○話「交差する思惑」3 ページ28
普通なら昼休みとしてゆっくり休憩をするはずの時間。昼食を食べただけで送り出された俺ら……は、いわく、"社会勉強"ということでチマリと着いてきた多恵ちゃんと、案内をしてくれる面太郎さんと隅々まで丁寧に掃除された無機質な廊下を並んで歩いていた。
なぜかしばゆーは手ぶらではなくピクニックに行くのかと思った、なーんてな、とか言ってリュックサックを背負ってきていたが、中にはいったい何が入っているのだろう。多恵ちゃんがお願いですからせんべいも入れさせてください、とさっきからずっと頼んでいた気がする。
しかし、わざわざこちらに歩幅を合わせて説明をしてくれていた面太郎さんは第四事務室、と書かれたプレートかけられている扉の前でピタッと足を止めた後、うつ向いたと思えば急にこう喋り始めた。
面「 さて、このドアを一枚隔てた先に例の方はお見えになっています。が、ここらで私はお別れとさせていただきましょう。まだまだしなければならないことが沢山ありますから、ね 」
と「 えっ! あー、何かあった時にフォローに回ってもらったりって、その、できませんかね……? えと、少しってかかなり心配なんすけど 」
面「 申し訳ありませんがね、あまりあの方と話していると気が変になるといいますか、なんというか。……はぁっ、もう。ちなみに、先ほど私が言ったわるぐ……コホン、アレコレは口外禁止ですからね? そこんとこわかっています? 」
面太郎さんはしつこく警告するように言うと、いかにも敏腕なビジネスマンって感じの引き締まった、けど同時に恐怖すら滲んでいるような視線をこちらに送りつけてきた。
心なしか冷や汗もあちこちから垂れているような気がする。俺らに目をつけた奇特な部長とやらと、体を抱きしめる社長の右腕の面太郎さん。立場ではそいつよりも、この人の方が圧倒的に上なはずなのに。なぜこう怯えたそぶりを見せているのだろうか。
面「 それでは失礼。あなた方の帰還。及び、生還を心から祈っております。何かあれば、いつでも私に取り次いでください。今回だけは……ある程度の協力はすることにしましょう 」
ここの冷たさを象徴するみたいにがらんどうな表情を浮かべていた面太郎さんは、今度は何を考えているのか、あらゆる嫌悪に顔を歪めている。それはどうしてあんな風に、とでも後悔するような口ぶりでしかなくて、俺は心のうちでまたチリ、と焼きつくグレーにささやかな暗雲を漂わせていた。
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ああああああああああああああああああああ(プロフ) - 更新待ってます、、いつまでも、、 (6月21日 21時) (レス) id: e3dfa91469 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:干し星 | 作成日時:2021年8月4日 11時